2007年6月 6日 (水)

ベルリンドイツオペラ ツェムリンスキー「夢見るゲルゲ」

松岡究です。一日遅れの投稿です。昨日ドイツオペラでたいへん嬉しいことがありました。それは、私の大切な友人、神戸大教授の藤本一夫氏にばったり出くわしたことです。私がキャスト表を眺めていると「きゅーちゃん!」と日本語が。振り向くとフーニー(彼の愛称)が立っているではありませんか。男同士抱き合って再会を喜び、オペラ終演後はベルリンに留学している彼の愛弟子と3人でレストランへ。久しぶりの再会を喜び合いました。彼はドレスデンの郊外にあるゲルリッツの大学に3ヶ月客員教授として来ているそうで、8月まで滞在するそうです。またの再会を約束して夜中の12時過ぎに分かれました。

演目    ツェムリンスキー「夢見るゲルゲ」

配役    ゲルゲ:スティーブ・ダヴィスリム

       グレーテ:フィオンヌアラ・マッカーシー

       ミューラー:ティツィアーノ・ブラッチ

       ハンス:マルクス・ブリュック

       王女:マヌエラ・ウール  他

  指揮:ジャック・ラコンブ

  演出:ヨアヒム・シュレーマー

先週の5月27日にプレミエを出して、6月4日が3回目の公演。この作品は藤野氏(以下フーニー)によると、1907年にマーラーの指揮で初演されるはずだったのが、どういったわけか初演されずそのまま埋もれてしまったもので、1980年ニュルンベルク歌劇場で復活上演されたと言う曰くつきの作品だそうです。ツェムリンスキーには8本のオペラがあり一部を除いてほとんどがそういう運命にあった(オペラ以外の作品も)そうで、これからいろいろ復活上演・演奏が期待されるとのこと。

今日の上演は作品の上質な手応えは充分に有ったものの、上演としてはいささか低調な感がありました。その最大の原因は演出にあると思います。フーニーとも話しましたが、こういった一般に広く知られていない作品、ましてや埋もれていた作品の上演の場合、まず時代設定を台本どおりにやってほしかったと言うこと。それは作品の時代背景が見えるようでないと作品の意図するところがはっきりわからないのではないかと言うことです。今回の舞台には、まるでPotzdamer Platz駅のような空間にエスカレーターと階段を配置し、まさしく今のベルリンをそのまま持って来た何とも想像力の皆無な舞台装置。休憩後の2幕の初めにはスケボーをやる若者(実際にいるんです)を2・3分見せてから、音楽をスタートさせる。私に言わせると全くナンセンスの極み。

歌手ではゲルゲを歌ったダヴィスリムとグレーテのマッカーシーが良く健闘していました。しかしこの劇場の空間にはやや物足りない声。多分コーミッシェオパーや国立歌劇場なら全く問題はなかったでしょうが。ラコンブ指揮のオケもきれいに整った演奏。特に休憩後は乗ってきたのかずっと良くなりました。

音楽にはたいへん驚いたのですが、リヒャルト・シュトラウスの後期の作品に全くそっくりな響きやメロディーラインが数々見受けられました。そのシュトラウスがサロメを書いていた時代にもうこのような響きが実際に生まれており、初演されず眠っていた間にシュトラウスがああいった円熟の境地を迎えているんだということを考えながらこの上演を聴いていると、時代の求めている事と作品の時間差に何とも言えない面白さを感じます。

   hakaru matsuoka

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2007年5月18日 (金)

ベルリンドイツオペラ ロッシーニ「セミラーミデ」

松岡究です。今朝起きてインターネットで気温を見ると何と8度。昼間も13・4度くらいで推移していたようです。思わずまたダウンコートを出してしまいました。それから今日は祝日で、すっかり忘れていた私は、ほとんどの店が閉まっているので食べ物を探し回っておりました。

演目  ロッシーニ「セミラーミデ」

配役  セミラーミデ:イアノ・タマール

     アルサーチェ:マリナ・プルデンスカヤ

     アスール:イルダール・アプドラザコフ

     イドレーノ:ブルース・フォウラー

     アゼーマ:ジャクリン・ワグナー

     オローエ:ラインハルト・ハーゲン

     ミトラーネ:ヨセップ・カン  他

 指揮:アルベルト・ゼッダ

 演出:キルステン・ハームス

ゼッダがピットに姿を現すや否や、早くもブラボーの声。序曲が始まりそれが終わるとまたもや「ブラボー!」の声。う~ん、そんなに今の演奏良かった?と聞いてみたくなりました。確かに、世界的なロッシーニの権威でいらっしゃいますが・・・・毎年ベルリンドイツオペラでゼッダは1演目を振っていますが、オーケストラの出が合わないことがしばしばで、音色もくすんだ音色になってるんですが、どうして皆そんなに最初から騒ぐのかちょっと???なんです。(ファンと言うものはそういうものかもしれませんが)

今日も1幕1場までは低調な感じでした。しかし2場の空中庭園の場面あたりから、歌手達も温まってきたのか、ゼッダが乗せたのか、音楽が俄然輝きだし主な役どころの歌手達のコロラトゥーラの競演が見事に決まり始めました。それは最後まで続きこのロッシーニにしては珍しい悲劇的メロドラマの4時間10分に及ぶ長い時間を飽きさせずに楽しませてくれました。(時差でちょっと眠くなりましたけど)

歌手達は大変素晴らしく、中でも女性3人は甲乙つけがたくいずれも素晴らしい出来。私の好みで言えばプルデンスカヤのアルサーチェは決して日本人にはない深い奥行きのある声でコロラトゥーラを見事に決め、爽快でした。男声ではアッスールのアプドラザコフが度肝を抜くような凄い声で細かいパッセージを歌いきって、これも圧巻。

ゼッダは本当にロッシーニを愛してるんだなとわかるような溌剌とした指揮で、1幕2場以降を的確にリードしていました。

演出は時代設定は現代ですが、物語の大筋はオリジナルをほとんど踏襲しており、違和感なく見れました。

   hakaru matsuoka

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2007年4月16日 (月)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「トリスタンとイゾルデ」

松岡究です。今日も暑い一日でした。もうほとんど気温はこちらでは夏の気温に近いです。

演目   ワグナー:「トリスタンとイゾルデ」

配役   トリスタン:クリスティァン・フランツ

      イゾルデ:ガブリエレ・シュナウト

      マルケ王:ハンス・ペーター・ケーニッヒ

      クルヴェナル:マティアス・ゲルネ

      ブランゲーネ:ぺトラ・ラング   その他

  指揮:ペーター・シュナイダー

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今日は日曜でしたから、17時に始まってちょうど22時に終演でした。まず指揮のシュナイダーはきびきびしたテンポ感と手馴れた(多分100回位は振っているんじゃないかな)棒さばきで、オーケストラから実に美しい音を引き出していました。前奏曲の途中まではオケもまだ乗ってないというかちょっと温まってない感じがしましたが、前奏曲の後半になると全体がよくブレンドされたいい音になってきました。ただ全体の味付けはあっさりぎみで官能的な音楽は聞えてきませんでした。

歌手の中ではトリスタンのフランツとマルケ王のケーニッヒは誰が聞いても素晴らしい歌唱だったんじゃないでしょうか。フランツは豊かな声量と決して張り上げないでも充分に通る声をコントロールする技術を持っているように見受けました。そしてケーニッヒは持ち前の堂々とした声で存在感を示していました。問題はシュナウトで声量は豊かですし超えも悪くないのですが、歌い方に少し癖があって、下からちょっとずり上げるのは聴き苦しい感じがしました。(数名カーテンコールでブーイングしてました)しかし存在感は立派なもので最後の「愛の死」は感動しました。

フリードリッヒの演出も奇を衒わず大変素直にその世界に入り込め、昨年シュターツオパーで見た演出より個人的には好きです。

しかしワグナーとなると本当にドイツ人は好きなんですね。最後のカーテンコールの騒ぎ方は普通のオペラの時とはちょっと違う感じがします。

   hakaru matsuoka

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2007年3月30日 (金)

ベルリンドイツオペラ ウェーバー「魔弾の射手」

松岡究です。この記事は3月27日に行われたオペラの記事です。ブログの調子がよくなくて繋がらなかったので、今日になってしまいました。

今日も大変良い天気でぽかぽかして気持ち良い一日でした。こちらには日本のような問題のある杉はありませんが、他の花粉が飛んでいます。それでちょっと目が痒かったりします。でも日本から今の時期にこちらに来た人は、花粉症からほとんど開放されるようです。

演目  ウェーバー:魔弾の射手

配役  オットカール:サイモン・ポーリー

    アガーテ:ミハエラ・カウネ(病気のマヌエラ・ウールの代役)

    エンヒェン:セシール・デ・ベーヴァー

    カスパール:ラインハルト・ハーゲン

    マックス:ウィル・ハルトマン 他

  指揮:レナート・パルンボ

  演出:ギュンター・クレーマー

3月24日にプレミエ。今日が2回目の本番でした。まず指揮のパルンボが良かったと思います。このオペラはやり方によっては大変田舎臭い、聞いていると音楽的な美点ではなく欠点ばかりが耳につきやすい音楽だと思うのですが、パルンボはやや速めのテンポで、生き生きと現代的に音楽を作り上げ、全く田舎臭さを感じさせずスマートにそして時には劇的に音楽を運んでいたのがとてもよかったと思います。

演出は、またしてもギュンター・クレーマー。彼は世界中で引っ張りだこですね。今回も期待に違わず良い舞台を作っていました。舞台に緊張感と神秘性があって見る人をあきさせず良かったと思いました。特に2幕のザミエルの場面では、ザミエルの演技が不気味で恐ろしくひきつけられましたし、3幕の舞台の青銅色のライティングは良かったと思いました。歌手ではマックスを歌ったハルトマンが張りのあるいい声でしたし、アガーテのミハエラ・カウネはピアノの表現が素晴らしくコントロールされ、大きな拍手を受けていました。彼女は2番手のアガーテで、今日は代役で出演していました。(本来はマヌエラ・ウールでした。)

今日はドイツオペラにしては珍しくほとんど満員で、多分初日の成功が2日目も人を読んだのではないかと思います。この舞台は良い舞台になると思います。

      hakaru matsuoka

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2007年3月29日 (木)

ベルリンドイツオペラ バッハ「マタイ受難曲」

松岡究です。今日はもうすぐイースターと言うこともあって、バッハの「マタイ受難曲」をオペラで見てきました。この時期になると、スーパーや八百屋にはホワイトアスパラが出回り始めます。私ももう2度ほど食べました。そしてイースターに合わせて各合唱団が「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」をこぞって取り上げ、マタイ・ヨハネのポスターだらけになります。

演目  J・S・バッハ「マタイ受難曲」

配役 エヴァンゲリスト:クレメンス・ビーバー

    イェス:マルクス・ブリュック

    ユダ:アンテ・ジェルクニカ

    ペトロ:サイモン・ポーリー

    ソプラノ:ジャクリーン・ワグナー フィオンヌアラ・マッカーシー ティナ・シェラー  

    アルト:サラ・ファン・デァ・ケンプ アンディオン・フェルナンデズ  他

  指揮:ザミュエル・ベヒリ

演出:ギュンター・エッカー ゲッツ・フリードリッヒ ディートリンデ・カルソウによる共同演出

オラトリオをオペラとしてやることには私は大賛成です。それだけの劇的内容を持っていますし、視覚的な要素も入って理解しやすくなるからです。ただ音楽的な犠牲はかなり覚悟の上でのことです。

今回も合唱が4階建ての団地式の装置に2つに分かれて歌っているため、何度もアンサンブルが乱れ、何とか持ち直すのですが如何ともしがたいものがありました。版をメンデルスゾーンの編曲版を使っているため、オーケストラもどちらかと言うとロマンティックにヴィブラートはかなりかけての演奏でしたし、歌い方も必然的にオペラティックになってアルトの2人などはオラトリオの歌い方ではありませんでした。しかしソプラノの2人(ワグナーとマッカーシー)は清楚にピアノを大事にした陰影のある歌を披露してよかったです。演奏会ではソプラノもアルトも一人で歌われることが多いですが、こうやって一つのアリアや重唱を違う人間が歌うとリアリティーが出て来るのは驚きでした。エヴァンゲリストのビーバー、イェスのブリュックどちらもすばらしかったです。

演出は、舞台から客席の左手奥まで長い廊下を臨時に作り、そこからイェスと弟子達が登場。舞台には合唱は上記の通り団地式に配置され、全ての受難が見えるように工夫されています。またこの春の風物詩であるホワイトアスパラ(イースターに合わせて街中に出回るこのSpargelを復活と掛けているのだと思います)の巨大なものが11本舞台に並び、それを動かして状況設定を作り上げていきます。中には勿論十字架状のホワイトアスパラもあります。イェスが死ぬまでを克明に描きながら、最後の合唱で復活したイェスが登場。何ともいえない感動を覚えました。最後、拍手が起こっても皆舞台で抱き合って祝福し合い、すぐに指揮者が舞台に登場してやっとカーテンコールとなりました。演じている人たち歌っている人たち皆が、このイースターを祝っているのだと感じ入りました。

   hakaru matsuoka

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2007年3月19日 (月)

ベルリンドイツオペラ ヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」

松岡究です。実は昨日まで3日間だけドレスデンに行っておりました。ホテル(三ツ星のコンフォート)だったので、インターネットにつなげる環境になかったので、折にふれ報告いたします。今日はそのドレスデンから帰って来てすぐ行ったものです。

演目  ヴェルディ:シモン・ボッカネグラ

配役  シモン・ボッカネグラ:ロベルト・フロンターリ

     ヤコポ・フィエスコ:ロベルト・スカンディウッツィ

     パオロ・アルビアーニ:ラルフ・ルーカス

     アメーリア(マリア):タマール・イヴェリ 他

  指揮:アッティリオ・トマセッロ

  演出:ロレンツォ・フィオローニ

客の入りは4割くらいだったと思います。リングの時とは打って変わって、全くの不入り。しかし上演の質はハイクオリティー。主役と言える4人はもとより早くの男性陣も素晴らしい歌唱と声。この作品は物語が少し難しいのと音楽が地味(私は滋味と書きたいです)なので、なんとなく不人気な作品。しかし私に言わせればトラヴィアータやリゴレットに比べると実に充実した筆捌きだと思います。

まず第一に指揮のフィオローニが素晴らしい。実に落ち着いた柔軟な棒さばきで全体をコントロールしているのが手に撮るように良くわかります。歌い手も彼を信頼しているのがわかりますし、見ていて安心感があります。オケもいい音を出していましたが、ところどころ管楽器に音程のブレがあり、今のドイツオペラの現状を垣間見るような感じでした。

歌手では2人のロベルトが素晴らしい。2人ともイタリアオペラの醍醐味を満喫させてくれました。またマリア(アメリア)のイヴェリも素晴らしいソプラノ。フォルテからピアノまであのリリックな声で良くコントロールされていました。

演出はどうかな?現代に置き換えてのことは毎度ながら、アメリアではなくマリアとして登場させたのは良くわからないです。マリアはオペラが始まるときには普通は死んでしまって、アメーリアはシモンの孫娘のはず。それがどういうわけか今回はマリアとしての登場。今シーズン今日が最後の上演なので、もう一度見て確認するわけには行きませんが、ただでさえわからない筋書きなのに余計わからなくなってしまいました。

今日は旅の疲れもありやめにしようと思っていたのですが、思い切って行ってみて良かったです。指揮者と歌手とのアンサンブルがいいと舞台は本当に締まりますね。

   hakaru matsuoka   

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2007年2月26日 (月)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「神々の黄昏」

松岡究です。今日は暖かい一日でした。最高が10度あったそうです。ベルリンドイツオペラの「指輪」のサイクルも今日が最終日でした。夕方4時に始まり、終演は9時40分でした。

演目   ワグナー「神々の黄昏」

配役 ジークフリート:アルフォンス・エーベルツ

    グンター:レヌス・カリソン

    アルベリッヒ:リヒャルト・パウル・フィンク

    ハーゲン:エリック・ハーフヴァーソン

    ブリュンヒルデ:エヴェリン・ヘルリツィウス

    グートルーネ:ミカエラ・カウネ

    ヴァルトラウテ:マリナ・プルデンスカヤ   他

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今日も素晴らしい公演でした。4日間を通して「ジークフリート」と今日の「黄昏」が極め付けだったのではないかと思います。まずきょうもランニクルスとオケが素晴らしいのです。最初の出だしから意味のある音であるのが良くわかります。ラインの黄金の時の集中力のない音楽、ワルキューレの時のちょっと雑然とした感じは全くなく、指揮とオケが一体となって正味4時間半を充実した演奏で聞かせてくれました。最後のカーテンコールではオケも舞台に全員が上がり、ブラボーの嵐!ランニクルスがこのドイツオペラの音楽監督?と錯覚するくらいの一体感と観客からの反応でした。

歌手陣はやはりブリュンヒルデを歌ったヘルリツィウスとジークフリートのエーベルツが最高。そしてアルベリッヒのフィンクも素晴らしい。皆素晴らしいかったけど、この3人は特記するべき出来でしょう。

演出も素晴らしい。最後の最後までトンネルを出さずに最後に黄昏ていくというかピアニッシモで終わるところで、光と奥行きをうまく使った効果はジーンと来ました。しかし誰一人としてその瞬間拍手をしないのはさすが!音が終わり、黄昏が消えて10秒近く静まり返ったあの静寂!やはり聴衆も一流でした。     

それにしてもワグナーはドイツ人にとっては切っても切れない「魂のふるさと」のようなものなのでしょう。それを立派にやりつくした歌手や指揮者・オケにはそれこそ全身全霊の拍手とブラボーを贈るのですね。大成功とはこういうことを言うのでしょう。本当にすごい観客の反応でした。

   hakaru matsuoka

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2007年2月24日 (土)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「ジークフリート」

松岡究です。今日は寒い一日でした。気温はマイナス1度。さすがに氷点下になると外にでるのが億劫になりますね。

ワグナーはドイツ人にとっては、大変人気のある作曲家です。この前ご一緒した通訳のミッテルホイザー三は「さまよえるオランダ人」や「ローエングリン」の合唱を聞くだけで、涙が出てくると仰っていました。また5年続けてバイロイト音楽祭のチケットを申し込んでいるそうですが、未だに手に出来ないそうです。ミッテルホイザーさんによると、7年待たないと一般の客にはチケットが回ってこないとか!ワグナーはドイツ人のDNAの一部なんですね。

演目  ワグナー: ニーベルンゲンの指輪 第2夜「ジークフリート」

配役   ジークフリート:アルフォンス・エーベルツ

      ミーメ:ブルクハルト・ウルリッヒ

      さすらいの旅人:テリェ・ステンスヴォルト

      アルベリッヒ:リヒャルト・パウル・フィンク

      ファフナー:フィリップ・エンス

      エルダ:マリナ・プルデンスカヤ

      ブリュンヒルデ:エヴェリン・ヘルツィウス

      森の小鳥:ディッテ・アンデルセン

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今日は前2作に比べても、格段に素晴らしい出来でした。まずランニクルスとオーケストラが素晴らしい。冒頭部分から絶妙のピアニッシモで始まり、正味4時間一切弛緩することなく、程よい粘り腰の音楽を演奏し続けていました。正直言って「ジークフリート」がこんなに面白い素晴らしい音楽だったなんて、恥ずかしながら初めて知りました。今までは日本の歌手やオケによるものしか知らなかったのですが、こうやって聞いてみると、ワグナーが自分の息子にジークフリートと名付けたように一番気に入っていたこの作品の素晴らしさをやっと目の当たりにした気持ちです。

そう思わせてくれたのは、ます指揮のランニクルスとオケです。そして歌手陣の充実振りは前2夜と変わりなく、ヴォータン扮するさすらいの旅人のステンスヴォルト、エルダのプルデンスカヤ、そして何と言ってもジークフリートのエーベルツは本当に素晴らしい出来でした。

毎夜思ったことですが、こういった作品はどう転んでも日本人の歌手には無理でしょう。日本人には日本人にあった発声のオペラをやるべきでしょう。今回もヴォータンのステンスヴォルトは名前からするとスウェーデンかどこかでしょう。それにロシア人やイタリア人、指揮のランニクルスはアメリカ人。こういった人たちがワグナーをやっているわけです。ワグナーはドイツ人のDNAになっているとはいえ、「やれるべき人がやる」のは言うまでもありません。

   hakaru matsuoka

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2007年2月21日 (水)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「ラインの黄金」

松岡究です。1週間ぶりでの投稿です。

昨日は、ワグナー「ニーベルンゲンの指輪」の序夜「ラインの黄金」を聴きました。先日も申しましたとおり、チケットを手に入れるのが遅かったので、順番が入れ替わってしまいました。

配役 ヴォータン:テリェ・ステンスヴォルト

    ドナー:マルクス・ビーム

    フロー:フェリペ・ロヤス・ヴェローゾ

    ローゲ:クレメンス・ビーバー

    アルベリッヒ:リヒャルト・パウル・フィンク

    ミーメ:ブルクハルト・ウルリッヒ

    ファゾルト:ラインハルト・ハーゲン

    ファフナー:フィリップ・エンス

    フリッカ:マリナ・プルデンスカヤ

    フライア:マヌエラ・ウール

    エルダ:チェリ・ウィリアムス

    ヴォークリンデ:フィオヌアーラ・マッカーシー

    ヴェルグンデ:ダニエラ・シンドラム

    フロッシルデ:ニコレ・ピッコロミーニ

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今回も10日前のワルキューレに劣らず素晴らしい公演でした。ただ惜しいのは、ラインの原始kら創生にかけてのあの素晴らしいオーケストラの音楽が、何とも凡庸な気の抜けた感じに聞こえてきて、ちょっとがっかりでした。それはそのままラインの乙女の所まで尾を引いていて、ただ音と声が響いてくる幹事に聞えていました。しかしヴォータンが出て来るや、オーケストラの音も輝きを増し、実に艶やかに大きくうねり始めました。やはり「舞台からの表現がオーケストラを巻き込む」 というオペラ独特の乗りはいいものです。

その後は実に素晴らしい舞台で、ヴォータン、ドナー、ローゲ、ミーメ、アルベリッヒ、フリッカ、フライア、エルダ、どの役も素晴らしい声と表現で楽しませてくれました。

フリードリッヒの演出は、ラインの深い川床の下にあるような長いトンネルを初めにみせ、それから音楽がなり始めるというもの。妙に合点がいき期待したのに、音楽がちょっと?!ランニクルスはいい指揮者だけど、こういう雰囲気を醸し出すところでは、ちょっと役不足かもしれません。ヴォータン登場以後は、素晴らしきカペルマイスターでした。

職人として素晴らしいことと芸術家として素晴らしいことの両立は本当に難しいのだと改めて思いました。

    hakaru matsuoka

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2007年2月11日 (日)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「ワルキューレ」

松岡究です。今日は寒かったです。最低気温がマイナス5度。日中もほとんど気温は上がらず、マイナスの世界!

演目  ワグナー:ワルキューレ

配役  ジークムント:ロベルト・ディーン・スミス

     フンディング:ラインハルト・ハーゲン

     ヴォータン:テリェ・ステンスヴォルト

     ジークリンデ:エヴァ・ヨハンソン

     フリッカ:マリナ・プルデンスカヤ

     ブリュンヒルデ:エヴェリン・ヘルリツィウス

   その他ワルキューレ8名

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今回ドイツオペラはワグナーの「リング」を2サイクル取り上げています。久しぶりの「リング」と言うこともあって、早い時期から売り切れていたようで、私が築いたときにはほとんどチケットはありませんでした。それで私は第2サイクルの「ラインの黄金」「ジークフリート」「神々のたそがれ」は何とかチケットを手に入れることが出来たのですが、「ワルキューレ」だけは、ソールドアウト状態。たまたま他のチケットを手に入れて1週間後にWEBを除いて見ると、キャンセルで数枚チケットが出ているではありませんか。そこで手にしたのが今回のチケットと言うわけで、変則的になってしまいました。

一言で言うなら大変素晴らしい公演でした。特にヴォータン、ブリュンヒルデとジークリンデが素晴らしく、観客も大いに沸いていました。指揮のランニクルスは昨年、ベルリンフィルに客演した折、ツェムリンスキーの「抒情交響曲」を指揮しましたが、オケの特にティンパニとの折り合いが悪く、まさに殺人的音を出させていました。それが多分観客には不評だったと思います。客からそっぽを向かれて、あっという間に拍手は終わってしまいました。

今回ドイツオペラでの「リング」はまさに職人的手堅さと理解度の深さで持って、弛緩することなく5時間(18時に始まり2回の休憩を入れて23時に終わりました)を聞かせてくれました。特にたっぷりした音楽の情感は歌い手の素晴らしさと相俟って素晴らしい音の世界を作っていたと思います。

フリードリッヒの演出は伝説的と言ってもいいくらい有名なものです。特に2・3幕の奥行きのあるトンネルの装置は圧巻です。トンネルで舞台に奥行きを持たせ、時空を超えた物語の特性を如実に物語っています。

                hakaru matsuoka

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