2007年6月 6日 (水)

ベルリンドイツオペラ ツェムリンスキー「夢見るゲルゲ」

松岡究です。一日遅れの投稿です。昨日ドイツオペラでたいへん嬉しいことがありました。それは、私の大切な友人、神戸大教授の藤本一夫氏にばったり出くわしたことです。私がキャスト表を眺めていると「きゅーちゃん!」と日本語が。振り向くとフーニー(彼の愛称)が立っているではありませんか。男同士抱き合って再会を喜び、オペラ終演後はベルリンに留学している彼の愛弟子と3人でレストランへ。久しぶりの再会を喜び合いました。彼はドレスデンの郊外にあるゲルリッツの大学に3ヶ月客員教授として来ているそうで、8月まで滞在するそうです。またの再会を約束して夜中の12時過ぎに分かれました。

演目    ツェムリンスキー「夢見るゲルゲ」

配役    ゲルゲ:スティーブ・ダヴィスリム

       グレーテ:フィオンヌアラ・マッカーシー

       ミューラー:ティツィアーノ・ブラッチ

       ハンス:マルクス・ブリュック

       王女:マヌエラ・ウール  他

  指揮:ジャック・ラコンブ

  演出:ヨアヒム・シュレーマー

先週の5月27日にプレミエを出して、6月4日が3回目の公演。この作品は藤野氏(以下フーニー)によると、1907年にマーラーの指揮で初演されるはずだったのが、どういったわけか初演されずそのまま埋もれてしまったもので、1980年ニュルンベルク歌劇場で復活上演されたと言う曰くつきの作品だそうです。ツェムリンスキーには8本のオペラがあり一部を除いてほとんどがそういう運命にあった(オペラ以外の作品も)そうで、これからいろいろ復活上演・演奏が期待されるとのこと。

今日の上演は作品の上質な手応えは充分に有ったものの、上演としてはいささか低調な感がありました。その最大の原因は演出にあると思います。フーニーとも話しましたが、こういった一般に広く知られていない作品、ましてや埋もれていた作品の上演の場合、まず時代設定を台本どおりにやってほしかったと言うこと。それは作品の時代背景が見えるようでないと作品の意図するところがはっきりわからないのではないかと言うことです。今回の舞台には、まるでPotzdamer Platz駅のような空間にエスカレーターと階段を配置し、まさしく今のベルリンをそのまま持って来た何とも想像力の皆無な舞台装置。休憩後の2幕の初めにはスケボーをやる若者(実際にいるんです)を2・3分見せてから、音楽をスタートさせる。私に言わせると全くナンセンスの極み。

歌手ではゲルゲを歌ったダヴィスリムとグレーテのマッカーシーが良く健闘していました。しかしこの劇場の空間にはやや物足りない声。多分コーミッシェオパーや国立歌劇場なら全く問題はなかったでしょうが。ラコンブ指揮のオケもきれいに整った演奏。特に休憩後は乗ってきたのかずっと良くなりました。

音楽にはたいへん驚いたのですが、リヒャルト・シュトラウスの後期の作品に全くそっくりな響きやメロディーラインが数々見受けられました。そのシュトラウスがサロメを書いていた時代にもうこのような響きが実際に生まれており、初演されず眠っていた間にシュトラウスがああいった円熟の境地を迎えているんだということを考えながらこの上演を聴いていると、時代の求めている事と作品の時間差に何とも言えない面白さを感じます。

   hakaru matsuoka

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2007年5月18日 (金)

ベルリンドイツオペラ ロッシーニ「セミラーミデ」

松岡究です。今朝起きてインターネットで気温を見ると何と8度。昼間も13・4度くらいで推移していたようです。思わずまたダウンコートを出してしまいました。それから今日は祝日で、すっかり忘れていた私は、ほとんどの店が閉まっているので食べ物を探し回っておりました。

演目  ロッシーニ「セミラーミデ」

配役  セミラーミデ:イアノ・タマール

     アルサーチェ:マリナ・プルデンスカヤ

     アスール:イルダール・アプドラザコフ

     イドレーノ:ブルース・フォウラー

     アゼーマ:ジャクリン・ワグナー

     オローエ:ラインハルト・ハーゲン

     ミトラーネ:ヨセップ・カン  他

 指揮:アルベルト・ゼッダ

 演出:キルステン・ハームス

ゼッダがピットに姿を現すや否や、早くもブラボーの声。序曲が始まりそれが終わるとまたもや「ブラボー!」の声。う~ん、そんなに今の演奏良かった?と聞いてみたくなりました。確かに、世界的なロッシーニの権威でいらっしゃいますが・・・・毎年ベルリンドイツオペラでゼッダは1演目を振っていますが、オーケストラの出が合わないことがしばしばで、音色もくすんだ音色になってるんですが、どうして皆そんなに最初から騒ぐのかちょっと???なんです。(ファンと言うものはそういうものかもしれませんが)

今日も1幕1場までは低調な感じでした。しかし2場の空中庭園の場面あたりから、歌手達も温まってきたのか、ゼッダが乗せたのか、音楽が俄然輝きだし主な役どころの歌手達のコロラトゥーラの競演が見事に決まり始めました。それは最後まで続きこのロッシーニにしては珍しい悲劇的メロドラマの4時間10分に及ぶ長い時間を飽きさせずに楽しませてくれました。(時差でちょっと眠くなりましたけど)

歌手達は大変素晴らしく、中でも女性3人は甲乙つけがたくいずれも素晴らしい出来。私の好みで言えばプルデンスカヤのアルサーチェは決して日本人にはない深い奥行きのある声でコロラトゥーラを見事に決め、爽快でした。男声ではアッスールのアプドラザコフが度肝を抜くような凄い声で細かいパッセージを歌いきって、これも圧巻。

ゼッダは本当にロッシーニを愛してるんだなとわかるような溌剌とした指揮で、1幕2場以降を的確にリードしていました。

演出は時代設定は現代ですが、物語の大筋はオリジナルをほとんど踏襲しており、違和感なく見れました。

   hakaru matsuoka

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2007年4月16日 (月)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「トリスタンとイゾルデ」

松岡究です。今日も暑い一日でした。もうほとんど気温はこちらでは夏の気温に近いです。

演目   ワグナー:「トリスタンとイゾルデ」

配役   トリスタン:クリスティァン・フランツ

      イゾルデ:ガブリエレ・シュナウト

      マルケ王:ハンス・ペーター・ケーニッヒ

      クルヴェナル:マティアス・ゲルネ

      ブランゲーネ:ぺトラ・ラング   その他

  指揮:ペーター・シュナイダー

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今日は日曜でしたから、17時に始まってちょうど22時に終演でした。まず指揮のシュナイダーはきびきびしたテンポ感と手馴れた(多分100回位は振っているんじゃないかな)棒さばきで、オーケストラから実に美しい音を引き出していました。前奏曲の途中まではオケもまだ乗ってないというかちょっと温まってない感じがしましたが、前奏曲の後半になると全体がよくブレンドされたいい音になってきました。ただ全体の味付けはあっさりぎみで官能的な音楽は聞えてきませんでした。

歌手の中ではトリスタンのフランツとマルケ王のケーニッヒは誰が聞いても素晴らしい歌唱だったんじゃないでしょうか。フランツは豊かな声量と決して張り上げないでも充分に通る声をコントロールする技術を持っているように見受けました。そしてケーニッヒは持ち前の堂々とした声で存在感を示していました。問題はシュナウトで声量は豊かですし超えも悪くないのですが、歌い方に少し癖があって、下からちょっとずり上げるのは聴き苦しい感じがしました。(数名カーテンコールでブーイングしてました)しかし存在感は立派なもので最後の「愛の死」は感動しました。

フリードリッヒの演出も奇を衒わず大変素直にその世界に入り込め、昨年シュターツオパーで見た演出より個人的には好きです。

しかしワグナーとなると本当にドイツ人は好きなんですね。最後のカーテンコールの騒ぎ方は普通のオペラの時とはちょっと違う感じがします。

   hakaru matsuoka

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2007年3月30日 (金)

ベルリンドイツオペラ ウェーバー「魔弾の射手」

松岡究です。この記事は3月27日に行われたオペラの記事です。ブログの調子がよくなくて繋がらなかったので、今日になってしまいました。

今日も大変良い天気でぽかぽかして気持ち良い一日でした。こちらには日本のような問題のある杉はありませんが、他の花粉が飛んでいます。それでちょっと目が痒かったりします。でも日本から今の時期にこちらに来た人は、花粉症からほとんど開放されるようです。

演目  ウェーバー:魔弾の射手

配役  オットカール:サイモン・ポーリー

    アガーテ:ミハエラ・カウネ(病気のマヌエラ・ウールの代役)

    エンヒェン:セシール・デ・ベーヴァー

    カスパール:ラインハルト・ハーゲン

    マックス:ウィル・ハルトマン 他

  指揮:レナート・パルンボ

  演出:ギュンター・クレーマー

3月24日にプレミエ。今日が2回目の本番でした。まず指揮のパルンボが良かったと思います。このオペラはやり方によっては大変田舎臭い、聞いていると音楽的な美点ではなく欠点ばかりが耳につきやすい音楽だと思うのですが、パルンボはやや速めのテンポで、生き生きと現代的に音楽を作り上げ、全く田舎臭さを感じさせずスマートにそして時には劇的に音楽を運んでいたのがとてもよかったと思います。

演出は、またしてもギュンター・クレーマー。彼は世界中で引っ張りだこですね。今回も期待に違わず良い舞台を作っていました。舞台に緊張感と神秘性があって見る人をあきさせず良かったと思いました。特に2幕のザミエルの場面では、ザミエルの演技が不気味で恐ろしくひきつけられましたし、3幕の舞台の青銅色のライティングは良かったと思いました。歌手ではマックスを歌ったハルトマンが張りのあるいい声でしたし、アガーテのミハエラ・カウネはピアノの表現が素晴らしくコントロールされ、大きな拍手を受けていました。彼女は2番手のアガーテで、今日は代役で出演していました。(本来はマヌエラ・ウールでした。)

今日はドイツオペラにしては珍しくほとんど満員で、多分初日の成功が2日目も人を読んだのではないかと思います。この舞台は良い舞台になると思います。

      hakaru matsuoka

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2007年3月29日 (木)

ベルリンドイツオペラ バッハ「マタイ受難曲」

松岡究です。今日はもうすぐイースターと言うこともあって、バッハの「マタイ受難曲」をオペラで見てきました。この時期になると、スーパーや八百屋にはホワイトアスパラが出回り始めます。私ももう2度ほど食べました。そしてイースターに合わせて各合唱団が「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」をこぞって取り上げ、マタイ・ヨハネのポスターだらけになります。

演目  J・S・バッハ「マタイ受難曲」

配役 エヴァンゲリスト:クレメンス・ビーバー

    イェス:マルクス・ブリュック

    ユダ:アンテ・ジェルクニカ

    ペトロ:サイモン・ポーリー

    ソプラノ:ジャクリーン・ワグナー フィオンヌアラ・マッカーシー ティナ・シェラー  

    アルト:サラ・ファン・デァ・ケンプ アンディオン・フェルナンデズ  他

  指揮:ザミュエル・ベヒリ

演出:ギュンター・エッカー ゲッツ・フリードリッヒ ディートリンデ・カルソウによる共同演出

オラトリオをオペラとしてやることには私は大賛成です。それだけの劇的内容を持っていますし、視覚的な要素も入って理解しやすくなるからです。ただ音楽的な犠牲はかなり覚悟の上でのことです。

今回も合唱が4階建ての団地式の装置に2つに分かれて歌っているため、何度もアンサンブルが乱れ、何とか持ち直すのですが如何ともしがたいものがありました。版をメンデルスゾーンの編曲版を使っているため、オーケストラもどちらかと言うとロマンティックにヴィブラートはかなりかけての演奏でしたし、歌い方も必然的にオペラティックになってアルトの2人などはオラトリオの歌い方ではありませんでした。しかしソプラノの2人(ワグナーとマッカーシー)は清楚にピアノを大事にした陰影のある歌を披露してよかったです。演奏会ではソプラノもアルトも一人で歌われることが多いですが、こうやって一つのアリアや重唱を違う人間が歌うとリアリティーが出て来るのは驚きでした。エヴァンゲリストのビーバー、イェスのブリュックどちらもすばらしかったです。

演出は、舞台から客席の左手奥まで長い廊下を臨時に作り、そこからイェスと弟子達が登場。舞台には合唱は上記の通り団地式に配置され、全ての受難が見えるように工夫されています。またこの春の風物詩であるホワイトアスパラ(イースターに合わせて街中に出回るこのSpargelを復活と掛けているのだと思います)の巨大なものが11本舞台に並び、それを動かして状況設定を作り上げていきます。中には勿論十字架状のホワイトアスパラもあります。イェスが死ぬまでを克明に描きながら、最後の合唱で復活したイェスが登場。何ともいえない感動を覚えました。最後、拍手が起こっても皆舞台で抱き合って祝福し合い、すぐに指揮者が舞台に登場してやっとカーテンコールとなりました。演じている人たち歌っている人たち皆が、このイースターを祝っているのだと感じ入りました。

   hakaru matsuoka

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2007年3月19日 (月)

ベルリンドイツオペラ ヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」

松岡究です。実は昨日まで3日間だけドレスデンに行っておりました。ホテル(三ツ星のコンフォート)だったので、インターネットにつなげる環境になかったので、折にふれ報告いたします。今日はそのドレスデンから帰って来てすぐ行ったものです。

演目  ヴェルディ:シモン・ボッカネグラ

配役  シモン・ボッカネグラ:ロベルト・フロンターリ

     ヤコポ・フィエスコ:ロベルト・スカンディウッツィ

     パオロ・アルビアーニ:ラルフ・ルーカス

     アメーリア(マリア):タマール・イヴェリ 他

  指揮:アッティリオ・トマセッロ

  演出:ロレンツォ・フィオローニ

客の入りは4割くらいだったと思います。リングの時とは打って変わって、全くの不入り。しかし上演の質はハイクオリティー。主役と言える4人はもとより早くの男性陣も素晴らしい歌唱と声。この作品は物語が少し難しいのと音楽が地味(私は滋味と書きたいです)なので、なんとなく不人気な作品。しかし私に言わせればトラヴィアータやリゴレットに比べると実に充実した筆捌きだと思います。

まず第一に指揮のフィオローニが素晴らしい。実に落ち着いた柔軟な棒さばきで全体をコントロールしているのが手に撮るように良くわかります。歌い手も彼を信頼しているのがわかりますし、見ていて安心感があります。オケもいい音を出していましたが、ところどころ管楽器に音程のブレがあり、今のドイツオペラの現状を垣間見るような感じでした。

歌手では2人のロベルトが素晴らしい。2人ともイタリアオペラの醍醐味を満喫させてくれました。またマリア(アメリア)のイヴェリも素晴らしいソプラノ。フォルテからピアノまであのリリックな声で良くコントロールされていました。

演出はどうかな?現代に置き換えてのことは毎度ながら、アメリアではなくマリアとして登場させたのは良くわからないです。マリアはオペラが始まるときには普通は死んでしまって、アメーリアはシモンの孫娘のはず。それがどういうわけか今回はマリアとしての登場。今シーズン今日が最後の上演なので、もう一度見て確認するわけには行きませんが、ただでさえわからない筋書きなのに余計わからなくなってしまいました。

今日は旅の疲れもありやめにしようと思っていたのですが、思い切って行ってみて良かったです。指揮者と歌手とのアンサンブルがいいと舞台は本当に締まりますね。

   hakaru matsuoka   

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2007年2月26日 (月)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「神々の黄昏」

松岡究です。今日は暖かい一日でした。最高が10度あったそうです。ベルリンドイツオペラの「指輪」のサイクルも今日が最終日でした。夕方4時に始まり、終演は9時40分でした。

演目   ワグナー「神々の黄昏」

配役 ジークフリート:アルフォンス・エーベルツ

    グンター:レヌス・カリソン

    アルベリッヒ:リヒャルト・パウル・フィンク

    ハーゲン:エリック・ハーフヴァーソン

    ブリュンヒルデ:エヴェリン・ヘルリツィウス

    グートルーネ:ミカエラ・カウネ

    ヴァルトラウテ:マリナ・プルデンスカヤ   他

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今日も素晴らしい公演でした。4日間を通して「ジークフリート」と今日の「黄昏」が極め付けだったのではないかと思います。まずきょうもランニクルスとオケが素晴らしいのです。最初の出だしから意味のある音であるのが良くわかります。ラインの黄金の時の集中力のない音楽、ワルキューレの時のちょっと雑然とした感じは全くなく、指揮とオケが一体となって正味4時間半を充実した演奏で聞かせてくれました。最後のカーテンコールではオケも舞台に全員が上がり、ブラボーの嵐!ランニクルスがこのドイツオペラの音楽監督?と錯覚するくらいの一体感と観客からの反応でした。

歌手陣はやはりブリュンヒルデを歌ったヘルリツィウスとジークフリートのエーベルツが最高。そしてアルベリッヒのフィンクも素晴らしい。皆素晴らしいかったけど、この3人は特記するべき出来でしょう。

演出も素晴らしい。最後の最後までトンネルを出さずに最後に黄昏ていくというかピアニッシモで終わるところで、光と奥行きをうまく使った効果はジーンと来ました。しかし誰一人としてその瞬間拍手をしないのはさすが!音が終わり、黄昏が消えて10秒近く静まり返ったあの静寂!やはり聴衆も一流でした。     

それにしてもワグナーはドイツ人にとっては切っても切れない「魂のふるさと」のようなものなのでしょう。それを立派にやりつくした歌手や指揮者・オケにはそれこそ全身全霊の拍手とブラボーを贈るのですね。大成功とはこういうことを言うのでしょう。本当にすごい観客の反応でした。

   hakaru matsuoka

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2007年2月24日 (土)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「ジークフリート」

松岡究です。今日は寒い一日でした。気温はマイナス1度。さすがに氷点下になると外にでるのが億劫になりますね。

ワグナーはドイツ人にとっては、大変人気のある作曲家です。この前ご一緒した通訳のミッテルホイザー三は「さまよえるオランダ人」や「ローエングリン」の合唱を聞くだけで、涙が出てくると仰っていました。また5年続けてバイロイト音楽祭のチケットを申し込んでいるそうですが、未だに手に出来ないそうです。ミッテルホイザーさんによると、7年待たないと一般の客にはチケットが回ってこないとか!ワグナーはドイツ人のDNAの一部なんですね。

演目  ワグナー: ニーベルンゲンの指輪 第2夜「ジークフリート」

配役   ジークフリート:アルフォンス・エーベルツ

      ミーメ:ブルクハルト・ウルリッヒ

      さすらいの旅人:テリェ・ステンスヴォルト

      アルベリッヒ:リヒャルト・パウル・フィンク

      ファフナー:フィリップ・エンス

      エルダ:マリナ・プルデンスカヤ

      ブリュンヒルデ:エヴェリン・ヘルツィウス

      森の小鳥:ディッテ・アンデルセン

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今日は前2作に比べても、格段に素晴らしい出来でした。まずランニクルスとオーケストラが素晴らしい。冒頭部分から絶妙のピアニッシモで始まり、正味4時間一切弛緩することなく、程よい粘り腰の音楽を演奏し続けていました。正直言って「ジークフリート」がこんなに面白い素晴らしい音楽だったなんて、恥ずかしながら初めて知りました。今までは日本の歌手やオケによるものしか知らなかったのですが、こうやって聞いてみると、ワグナーが自分の息子にジークフリートと名付けたように一番気に入っていたこの作品の素晴らしさをやっと目の当たりにした気持ちです。

そう思わせてくれたのは、ます指揮のランニクルスとオケです。そして歌手陣の充実振りは前2夜と変わりなく、ヴォータン扮するさすらいの旅人のステンスヴォルト、エルダのプルデンスカヤ、そして何と言ってもジークフリートのエーベルツは本当に素晴らしい出来でした。

毎夜思ったことですが、こういった作品はどう転んでも日本人の歌手には無理でしょう。日本人には日本人にあった発声のオペラをやるべきでしょう。今回もヴォータンのステンスヴォルトは名前からするとスウェーデンかどこかでしょう。それにロシア人やイタリア人、指揮のランニクルスはアメリカ人。こういった人たちがワグナーをやっているわけです。ワグナーはドイツ人のDNAになっているとはいえ、「やれるべき人がやる」のは言うまでもありません。

   hakaru matsuoka

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2007年2月21日 (水)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「ラインの黄金」

松岡究です。1週間ぶりでの投稿です。

昨日は、ワグナー「ニーベルンゲンの指輪」の序夜「ラインの黄金」を聴きました。先日も申しましたとおり、チケットを手に入れるのが遅かったので、順番が入れ替わってしまいました。

配役 ヴォータン:テリェ・ステンスヴォルト

    ドナー:マルクス・ビーム

    フロー:フェリペ・ロヤス・ヴェローゾ

    ローゲ:クレメンス・ビーバー

    アルベリッヒ:リヒャルト・パウル・フィンク

    ミーメ:ブルクハルト・ウルリッヒ

    ファゾルト:ラインハルト・ハーゲン

    ファフナー:フィリップ・エンス

    フリッカ:マリナ・プルデンスカヤ

    フライア:マヌエラ・ウール

    エルダ:チェリ・ウィリアムス

    ヴォークリンデ:フィオヌアーラ・マッカーシー

    ヴェルグンデ:ダニエラ・シンドラム

    フロッシルデ:ニコレ・ピッコロミーニ

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今回も10日前のワルキューレに劣らず素晴らしい公演でした。ただ惜しいのは、ラインの原始kら創生にかけてのあの素晴らしいオーケストラの音楽が、何とも凡庸な気の抜けた感じに聞こえてきて、ちょっとがっかりでした。それはそのままラインの乙女の所まで尾を引いていて、ただ音と声が響いてくる幹事に聞えていました。しかしヴォータンが出て来るや、オーケストラの音も輝きを増し、実に艶やかに大きくうねり始めました。やはり「舞台からの表現がオーケストラを巻き込む」 というオペラ独特の乗りはいいものです。

その後は実に素晴らしい舞台で、ヴォータン、ドナー、ローゲ、ミーメ、アルベリッヒ、フリッカ、フライア、エルダ、どの役も素晴らしい声と表現で楽しませてくれました。

フリードリッヒの演出は、ラインの深い川床の下にあるような長いトンネルを初めにみせ、それから音楽がなり始めるというもの。妙に合点がいき期待したのに、音楽がちょっと?!ランニクルスはいい指揮者だけど、こういう雰囲気を醸し出すところでは、ちょっと役不足かもしれません。ヴォータン登場以後は、素晴らしきカペルマイスターでした。

職人として素晴らしいことと芸術家として素晴らしいことの両立は本当に難しいのだと改めて思いました。

    hakaru matsuoka

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2007年2月11日 (日)

ベルリンドイツオペラ ワグナー「ワルキューレ」

松岡究です。今日は寒かったです。最低気温がマイナス5度。日中もほとんど気温は上がらず、マイナスの世界!

演目  ワグナー:ワルキューレ

配役  ジークムント:ロベルト・ディーン・スミス

     フンディング:ラインハルト・ハーゲン

     ヴォータン:テリェ・ステンスヴォルト

     ジークリンデ:エヴァ・ヨハンソン

     フリッカ:マリナ・プルデンスカヤ

     ブリュンヒルデ:エヴェリン・ヘルリツィウス

   その他ワルキューレ8名

  指揮:ドナルド・ランニクルス

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今回ドイツオペラはワグナーの「リング」を2サイクル取り上げています。久しぶりの「リング」と言うこともあって、早い時期から売り切れていたようで、私が築いたときにはほとんどチケットはありませんでした。それで私は第2サイクルの「ラインの黄金」「ジークフリート」「神々のたそがれ」は何とかチケットを手に入れることが出来たのですが、「ワルキューレ」だけは、ソールドアウト状態。たまたま他のチケットを手に入れて1週間後にWEBを除いて見ると、キャンセルで数枚チケットが出ているではありませんか。そこで手にしたのが今回のチケットと言うわけで、変則的になってしまいました。

一言で言うなら大変素晴らしい公演でした。特にヴォータン、ブリュンヒルデとジークリンデが素晴らしく、観客も大いに沸いていました。指揮のランニクルスは昨年、ベルリンフィルに客演した折、ツェムリンスキーの「抒情交響曲」を指揮しましたが、オケの特にティンパニとの折り合いが悪く、まさに殺人的音を出させていました。それが多分観客には不評だったと思います。客からそっぽを向かれて、あっという間に拍手は終わってしまいました。

今回ドイツオペラでの「リング」はまさに職人的手堅さと理解度の深さで持って、弛緩することなく5時間(18時に始まり2回の休憩を入れて23時に終わりました)を聞かせてくれました。特にたっぷりした音楽の情感は歌い手の素晴らしさと相俟って素晴らしい音の世界を作っていたと思います。

フリードリッヒの演出は伝説的と言ってもいいくらい有名なものです。特に2・3幕の奥行きのあるトンネルの装置は圧巻です。トンネルで舞台に奥行きを持たせ、時空を超えた物語の特性を如実に物語っています。

                hakaru matsuoka

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2007年1月 7日 (日)

ベルリンドイツオペラ プッチーニ「ラ・ボエーム」

松岡究です。ベルリンの天気はほとんど晴れる事がなく、毎日雨か曇りの天気です。しかし気温は高くて、東京とほぼ同じくらいが続いています。ヘンですね。

演目   プッチーニ 「ラ・ボエーム」

配役   ミミ:アーニャ・ハルテロス  (アレクシア・ヴォルガリドウの代役)

      ロドルフォ:フェリーぺ・ロヤス・ヴェローゾ

      ムゼッタ:フィオヌアラ・マッカーシー

      マルチェロ:マルクス・ブリュック

      ショナール:ジュローム・アントワーヌ

      コルリーネ:ヒュンーウ・リー  他

  指揮:アンドリス・ネルソン

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

ひょっとして私は記念すべき日に立ち会ったのかもしれません。すなわちミミを歌ったハルテロスが大変素晴らしい。ドイツオペラへは今日がデビューです。聴衆は全員がスタンディング・オベイション。ベルリンでこのような光景を見るのは極めて珍しいです。それくらい素晴らしい歌手。最後の4幕などは泣けて仕方なかったし、1幕の一声からして、並みの歌手とは違うものを感じさせてくれました。皆さん覚えてください!Anja Harteros(アーニャ・ハルテロス)というソプラノです。

ロドルフォのヴェローゾも綺麗な良い声を持った人。ただ先が細いので、このような大劇場には少しきついです。折角の声と歌心を失わないためにも、もう少し軽いもの専門になってもらいたいです。

他の歌手も実に楽しそうに歌い演じており、シュターツオパーで見たものよりとても楽しい舞台でした。

フリードリッヒの演出も奇を衒ったところが無く好感が持てましたし、2幕の舞台装置に観客から思わず拍手が出ていました。この舞台は1988年12月25日のまさにクリスマスのひがプレミエだったそうで、今日が64回目の舞台。

指揮のネルソンはまだ26歳の新鋭。1幕は全くの空回り状態でしたが、幕を追うごとによくなっていきました。オーケストラから品のある綺麗な音を引き出していました。

今日も満足して家路に着きました。

   hakaru matsuoka

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2007年1月 4日 (木)

ベルリンドイツオペラ ヴェルディ「ルイザ ミラー」

松岡究です。今日は朝晴れてたのにすぐ曇って、オペラの帰りには、しとしとと雨が降っていました。本当に変わりやすい天気で、多分日本で言うと、日本海側の冬の天気に似ているのではないかと思います。

演目   ヴェルディ 「ルイザ ミラー」

配役   ロドルフォ:ネイル・シコフ

      ミラー:ブルーノ・カプローニ

      ルイザ:アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ

      ワルター伯爵:ラインハルト・ハーゲン

      ウルム:アルチュン・コチニアン 他

  指揮:フレデリック・シャスリン

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

今日の主役はなんと言っても、ネイル・シコフ。2幕でたった1箇所、喉に入って声がひっくり返った他は、圧倒的な存在感。その1箇所のアクシデントで、本調子じゃないのかと一瞬ひやりとさせられましたが、すぐに立ち直ってそれ以後がそれまでよりも素晴らしい歌唱と表現力。なるほどと思いました。

ルイザを歌ったペンダチャンスカは、フォルテで力むと声にヴィブラートがかかりすぎ、音色が汚くなるのが難点。私の聴いた感じだと、このような思い役には向いていないんではないかと思われます。悪くはないのですが、ミスキャストではないでしょうか。

父親のミラーを歌ったカプローニも素晴らしい声の持ち主で、聴衆の喝采を浴びていました。コチニアンもハーゲンも役をわきまえた立派な出来。ただ歌が一本調子になるのが惜しいところでしょうか。

指揮のシャスリンも確かな棒で、ドラマコントロールも的確でした。

この演出もゲッツ・フリードリッヒのもの。2000年の11月11日がプレミエというと、多分生前最後の演出ではないでしょうか?

この作品は、18年前にニューヨークに行った時、METでパバロッティのロドルフォで見ました。指揮はサンティだったはずです。しかしその時のものより今回の方が、面白く見れたような気がします。

    hakaru matsuoka

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2006年12月29日 (金)

ベルリンドイツオペラ モーツァルト「フィガロの結婚」

松岡究です。26日にベルリンに戻り、その時は日本とさして変わらない気候でしたが、昨日からとても冷え込んで、気温は0度前後。今日はうっすらと雪化粧をしていました。

演目   モーツァルト 「フィガロの結婚」

配役  伯爵:ジュローム・アントワーヌ

     伯爵夫人:ジャクリーン・ワグナー

     スザンナ:フィオンヌッラ・マッカーシー

     フィガロ:リチャード・バーンスタイン

     ケルビーノ:ウルリケ・ヘルツェル

     マルチェリーナ:チェリ・ウィリアムス

     バジリオ:ブルクハルト・ウルリッヒ

     バルトロ:ティチアーノ・ブラッチ  他

   指揮:イヴェス・アーベル

   演出:ゲッツ・フリードリッヒ

ベルリンのレベルからすると、少し低調な出来。出演者は皆、さして美声を持っているわけでもなく、発声が良い訳でもない。地方の舞台や、日本ではよく見られるれべるだとおもいます。その中では、フィガロを歌ったバーンスタインが出色。伯爵は音程が悪く音楽的にモーツァルトを表現しえず、スザンナは初めは全く声が客席に届かず苦戦。来るビーノはテンポが速いせいか、言葉が不明瞭で音程も下がり気味。夫人は高音に難があり、豊かさを表現するには、もう一歩及ばず。・・・・

指揮のアーベルも何を言いたいのか良くわからないテンポ設定。今時の流行?の古楽器的テンポはオーケストラには理解されていない感じ。ついぞ溌剌たる音楽は聴かれずじまい。

フリードリッヒの演出は1978年12月14日にプレミエを出したもので今回が113回目の舞台だそうです。オーソドックスで見ていて安心感はあるものの、少々古臭い感じは否めません。やはり東京のホモキのフィガロ、そしてコーミッシェオパーのフィガロは、私には今迄で一番のような気がします。

    hakaru matsuoka

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2006年11月10日 (金)

ベルリンドイツオペラ ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ」

松岡究です。今日の昼間では意外と暖かかったのに、夕方になって急に雹が降り始めました。すると一気に気温が下がり多分4度前後でしょう、予報にそうでていたので。

演目 ヴェルディ 「椿姫」

  ヴィオレッタ:アンドレア・ロスト(今日予定されていたエヴァ・メイの代わり)

  アルフレード:ロベルト・アロニカ

  ジェルモン:ロベルト・フロンターリ   その他

  指揮:イヴス・アーベル

  演出:ゲッツ・フリードリッヒ

これでベルリンの3つの歌劇場がレパートリーにしている「トラヴィアータ」を全部見たことになります。ゲッツ・フリードリッヒ演出で、1999年11月20日にプレミエを出したものです。今日がちょうど60回目の公演だと言うことです。

フリードリッヒの演出は視覚的に大変美しく、特にライティングは鮮やかです。しかし国立歌劇場のムスバッハの深い読みやコーミッシェオパーのクプファーの哲学的な感覚は無く、どちらかと言うと極めてオーソドックス、常識的な演出です。却ってそれだからこそ聴衆は音楽に集中できると言う利点があるように思います。

代役のロストは張りのある美しい声で熱演。しかし私の考えからすると、声がスープレット系なので影や重みに欠けるきらいがあり、少々違和感あり。アルフレードのアロニカは素晴らしいテノールで、今まで聴いたアルフレードの中ではピカイチ。ジェルモンのフロンターリも素晴らしい歌手。しかしその声は私だったらヤーゴかリゴレットの使いたい声ですね。ですから父親の優しさよりも厳しさの方がたくさん聞えてきて、ちょっとやるせない気持ちになりました。

合唱はちょっと問題あり。迫力もないし平板で「真面目にやれ」と言いたくなるような内容。

指揮のアーベルは要所を押さえた余裕のある指揮。もう少しドラマがあるといいなあ。

やはりこういった演目は人気があって、開演前のチケットの窓口は長蛇の列。ドイツオペラにしてはかなり入ってました。

     hakaru matsuoka

      

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2006年10月20日 (金)

ベルリンドイツオペラ フランケッティ「ジェルマニア」

松岡究です。昨日今日と比較的穏やかな一日でした。日本よりは寒いですが、そんなに寒さを感じさせない小春日和。

演目 アルベルト・フランケッティ:ジェルマニア(ゲルマニア)

   フェデリーコ・レーヴェ:カルロ・ヴェントレ

   カルロ・ウォルムス:ブルーノ・カプローニ

   リッケ:リセ・リンドストローム

  その他にアルテュール・コチニアン等

   指揮:レナート・パルンボ

   演出:カーステン・ハームス

今日はイタリア式にはジェルマニア、勿論こちらではゲルマニアと言う私には初耳のオペラ。このオペラのアリア「学生諸君よ聴きたまえ」が少しは名が知られているくらいでしょうか。ブラームスの大学祝典序曲に用いられた「学生歌」も聴かれます。

1902年の3月2日にミラノのスカラ座でトスカニーニの指揮、カルーソーのテノールで初演され一時はかなりもてはやされた作品だそうです。それが埋もれてしまったんですね。聞いた印象は言ってみればマイアベーア的作品で、歌もオーケストラも大変豪華な音楽。中には涙をそそるような美しい音楽が存在するのに、印象に残るかというとそうでもない。パルンボの指揮も素晴らしくこのオペラを質の高い水準に引き上げていたし、テノールのカルロ・ヴェントレも素晴らしい声で熱演していたにもかかわらず、なんとなく中途半端。もっと泣かせるなら泣かせる、盛り上げるなら盛り上げてほしいところ。演奏スタイルがもっとネチッコイものだったらもっと聞き手の印象は変わっていたかもしれません。この辺りが現代忘れ去られてしまった原因かも。決して悪いオペラだと言ってるんではないのですよ。

5月から改装されていたというドイツオペラ。でもどこが変わったのか全くわかりませんでした。ただ音響は前よりもっと良くなった気がしました。

     hakaru matsuoka

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2006年6月28日 (水)

レナート・パルンボ指揮「エルナーニ」ベルリンドイツオペラ

松岡究です。ベルリンドイツオペラが5月の初めに休館に入り改装している間、ベルリンドイツオペラは色々と演奏旅行に行っていたようです。そして今日久しぶりにベルリンでの公演。場所はフィルハーモニーを借りての演奏会形式の公演でした。指揮は次期の音楽監督に決定しているレナート・パルンボ。ドイツオペラの今後を占う上でも今日の公演は楽しみにしていた公演のうちの一つでした。

演目   ヴェルディ 「エルナーニ」

エルナーニ:サルヴァトーレ・リチートラ

ドン・カルロ:ラド・アタネーリ

ドン・ルイ・ゴメツ:ジャコモ・プレスティア

エルヴィーラ:シルヴィー・ヴァレイレ 他3名

指揮:レナート・パルンボ

総じて良い公演でした。パルンボはこの珍しいオペラを実に良く研究していて、歌手・オケ・合唱に的確に指示を与え、あまり目立ったメロディーを持っていない地味な曲を面白く聞かせてくれました。またその指揮スタイルが飛んだり跳ねたりするので、アンサンブルがやりづらいと思われる反面、音とリズムに明るさがでて、この次期のヴェルディの作品の脆弱さをよくカヴァーしていたと思います。

歌手は上記の男声3人がとても充実していてヴェルディの声にふさわしく、大きな拍手とブラボーを受けていました。特にルチータとアタネーリは「これぞイタリアの声」と言わんばかりの絶唱!

反面女声の主役のヴァレイレはこの3人に比べるとかなり聴き劣りがしました。発声が地声そのもので、母音によって響きが違って不安定になり、かなり叫んでいたという感じ。この重要な演目に、女声の主役に彼女クラスの人しか用意できないところに、いまのドイツオペラの危機、あるいは問題があるのでしょう。彼女なんかよりずっとうまい日本人歌手は何人もいます。

パルンボは9月からドイツオペラの音楽監督ですが、ほとんどイタリア物しか指揮しない彼が、例えばウェーバーの「魔弾の射手」をプレミエに出したり、ワグナーのリングを演目に入れたりと(指揮はランニクルズ)、かなりドイツオペラを意識しているのは明らかです。今日を聴く限り、期待して良いのではないかと思いました。

   hakaru matsuoka

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2006年4月23日 (日)

アルベルト・ゼッダ指揮ベルリンドイツオペラ ロッシーニ「とてつもない誤解」演奏会形式

松岡究です。きょうは昨日より暑くなるのかと思っていましたら、生憎の雨。気温もそんなに上がらず4月上旬の気候に戻ってしまいました。昨日の件で言い忘れたんですが、一つ残念だったのが、ラトルが曲が終わってまだ指揮棒をおろさないのに拍手が起こったんですね。いつものベルリンの聴衆であればそんなことはないんですけど。つまり余韻まできちっと楽しんでるんです。多分その拍手は日本人だと思いました。昨日は特別コンサートで定期の枠組み外でのコンサートだったので、日本人がたくさんいたんですね。こんなこと言うと怒る人がいるのは重々承知で言ってるんですがね。ラトルの残念そうな表情が目に焼きついています。

曲目:ロッシーニ「とてつもない誤解」

配役

エルネスティーナ:マリーナ・プルデンスカヤ

ガンベロット:ブルーノ・タッディア

ブラリッキオ:マルコ・ヴィンコ

エルマンノ:アントニオ・シラグーサ

ロザリーナ:アンディオン・フェルナンデズ

フロンティーノ:ブルクハルト・ウルリッヒ

指揮:アルベルト・ゼッダ

今日は昨日に引き続き演奏会形式によるオペラの公演。ロッシーニの「とてつもない誤解」と言うオペラ。これは2005年の1月に東京オペラプロデュースで、演出が馬場紀夫さん、そして指揮が私で日本初演した作品でもあります。ロッシーニと言う作曲家は所謂天才で、ある意味ではメンデルスゾーンと同じですが、最初の作品から最後までとても高い完成度を持った作品を書いた人です。天才としてもてはやされていましたから、いろんなところから作曲依頼があり、自分の作品を使いまわしていたんですね。ですから「この曲はいったいどっちの作品のオリジナルなのか?」と言った疑問が研究されてきました。(例えば「セビリアの理髪師」序曲はオリジナルな序曲ではありません。)そして近年それが随分と解明されましたが、楽譜はまだ出版は全部されていません。今日の演奏の版も私たちがやった日本初演の時とは違って、ゼッダ自身が校訂した版のはずです。

さて今日はそのロッシーニ研究の第一人者であるゼッダの指揮でした。彼が登場するともう「ブラボー」の声が。そして指揮棒を構えてもまだ鳴り止まない拍手。もう一度ゼッダは客席を振り返り一礼、やっと序曲が始まりました(2幕も全く同じでした)。これだけの拍手をもらうのには、多分今までにロッシーニに関して大きな成功を収めて来たの違いないと思います。こんなのはベーム、カラヤン以来です。

こういった作品は本当に職人芸が必要で、例えばシンフォニー育ちのラトルがやるかと言えば絶対やらないでしょう。やはり曲によってその人の向き不向きは必ずあって、若いうちはいろんな物に挑戦するのだけれど、年を経るに従ってレパートリーが決まっていくのだと思います。

まずガンベロットを歌うはずだったブルーノ・プラティコが病気と言うことで急遽タッディアが楽譜持ちで歌いました。しかし彼はその楽譜をうまく小道具として利用しながら素晴らしい歌を聴かせてくれてブラボー!シラグーサはいつもながら明るい伸びやかな声を自由に操って圧巻。ブラリッキオのマルコ・ヴィンコも芸達者で客を笑いに持っていく術はたいした物です。そしてエルネスティアのプルデンスカヤは素晴らしいコントラルトで自由にコロラトゥーラを操ってこれも圧巻。歌い手は皆素晴らしい出来でした。一方ゼッダはやはりロッシーニをよく知っていて、音楽の運びに全く不自然さがありません。ただ舞台上にオーケストラが載っている関係上バランスがいささか気にはなりました。

       hakaru matsuoka

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2006年4月 2日 (日)

ベルリンドイチェオパー「夢遊病の女」

松岡究です。今日はドイチェオパーでベッリーニの「夢遊病の女」を見ました。このプロダクションは先月の22日にプレミエを出した物です。配役はアミーナがシンツィア・フォルテ、エルヴィーノがアントニーノ・シラグーサ、ロドルフォ伯爵がアルテュン・コチュニアン、テレサがスザンネ・クロイシュ、リーサがアインホア・ガルメンディア他。指揮はダニエル・オーレン、演出はジョン・デュー。

こういうオペラははっきり言ってやりたくないですね。筋書きは稚拙で笑ってしまうほどだし、ベッリーニの音楽は脆弱で、そのオーケストレーションはよほどショパンのピアノ協奏曲のほうが良く書けてると思えるくらいの極めつけの簡素さ。メロディーは美しいけれども、その技巧を駆使する歌手に音楽を余りにもゆだねすぎていること、必ずしも音楽とドラマが一致していないこと。指揮者はベッリーニ特有の歌いまわしに熟知し、また歌手に振り回されることなく音楽を運んでいかなければならないこと(一種の究極の職人芸が必要です。ですからプッチーニのオペラと並んでベッリーニ、ドニゼッティーやロッシーニはじっくりと勉強できない売れっ子指揮者には全く理解の範疇を超えたところにあるオペラになってしまいます。こういった作曲家はシンフォニーで育った指揮者には全くお手上げ状態になってしまうんですね。だからこの作曲家のオペラの録音は大体たたき上げの指揮者がやっていることが多いです。ダニエル・オーレンはその意味でも今日の成功を導いた立役者です。)ざっと考えただけでもこんなにやりたくない理由が見つかってしまいます。

このようなオペラをやるのは、はっきり言って博打を打つような物で、歌手が調子悪いとなったらもうお手上げ状態になってしまう危険のある何とも恐ろしいオペラなんですね。

今日の公演ではなんと言ってもシラグーサのテノールがピカイチ!彼が第一声を発した途端にその明るい華のある歌声に引き込まれてしまいました。しかし聴衆はあまり彼のような声は好きではないようです。何人かはブーイングを発していましたのでどういうことなのか考えさせられました。多分彼のような声はドイツ人には明るすぎて内容のない声に聞こえるのではないでしょうか?ペーターシュライアーとは180度対極にある声質ですからね。アミーナを歌ったシンツィア・フォルテは最初はとてもビブラートがきつく、少々疲れが見えましたが、歌っていくうちに彼女の美観が遺憾なく発揮され始め、シラグーサとの2重唱は2人とも絶妙なピアニッシモを聴かせてくれましたし、なんと言ってもnonn credea で彼女は音楽性と情感、そして技巧が一級であることを示してくれました。

しかしなんと言う脆弱な音楽!本当にすばらしい歌手にめぐり合うことがなければ、このオペラは(ベッリーニは)決して上演されるべきではないと強く思いました。

      hakaru matsuoka

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2006年3月 7日 (火)

ベルリンドイチェオパー「アイーダ」

松岡究です。今日はドイチェオパーの「アイーダ」です。この演出は今は亡きゲッツ・フリードリッヒの物で、1982年にプレミエを出して以来24年間続いている物です。出演者の動きは少ない物の、場面設定や舞台装置は良く考えられた物で、24年間続いてきた根拠が判る気がします。指揮は2月にコルンゴルトの「死の都」を指揮したフィリップ・アウガン。彼はヴェルディの最後から3番目のこのオペラを見事に振りました。完成度としてはコルンゴルトよりこちらの方が良かったと思います。7時半に始まって終演が10時45分、3時間あまりを全く飽きさせず、弛緩することなく持っていったのは彼の手腕の高さを物語っているのではないかと思います。彼はもう一度9日に「アイーダ」をやって、小沢さんの代役となった、上野の森の「オテッロ」に来日するのではないでしょうか。はっきり言って期待していいと僕は思います。

歌手は主なところを上げると、アイーダがミシェーレ・クリーダー、アムネリスがマリアンネ・コルネッティ、ラダメスがフランコ・ファニーラ。他にアルテュ-ル・コチニアン、ピエール・ダラース等。それぞれが声も持っているので本当にイタリアオペラの醍醐味を充分に味わわせてもらいました。特にアイーダを歌ったクリーダーはすばらしく、フォルテからピアノまで自由に歌い分け、ただ声を聞かせるのだけではなく、アイーダの純な心と内面性を表現してすばらしい出来でした。ファニーラは「清きアイーダ」が悪くはないものの、やはり硬かったですね。下のF音に戻るたびに不必要な装飾音が付いてしまって残念。しかし彼も上から下まで均一な音色を持っていて(つまり上の音で開いたり、張り上げたりと言うことがないですし、下の音も良く響きます。)、これはちゃんとした歌い手である証拠。歌い手に限らず、楽器は皆上から下まで均一な音色を持つことがプロとしては求められます。それが一流になる一つの必要条件に違いありません。今日の特にこの2人の歌い手はそう言いきれる2人だったと思います。

       hakaru matsuoka

追伸 コメントは一週間を限度に削除させていただくことにしました。宜しくお願いいたします。

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2006年2月28日 (火)

ベルリンドイチェオパー「アラベラ」

松岡究です。今日のベルリンはとてもいい天気ですごく気持ちの言い一日でした。といっても寒いですよ。今日はドイチェオパーでR・シュトラウスの「アラベラ」を見てきました。今月の12日にプレミエを出したばかりですが、今日が最終回の日です。指揮は新国立劇場でフィガロを振ったウルフ・シルマー、演出はアレクサンダー・フォン・プファイル。先ず一番目を耳をひきつけたのが、アラベラを歌ったミヒャエラ・カウネ。本当にすばらしかった。シュトラウスのあの流れる旋律の曲線を実によく歌い上げていました。マンドリカも悪くはなかったですね。ただアラベラが良いのでそれに隠れてしまったような感じですね。(小森君そんなに悪くなかったよ) ただ声が足りないというかいい声してるんだけど声に華がないというか、ん~、実に難しい、こればっかりは本人の才能の問題?

指揮のウルフ・シルマーがまたすばらしかったですね。ブログの最初の方の記事でちょっと触れましたが、ちょうど1年前ティーレマンが辞任する直前のR・シュトラウスも本当にドイツ人がシュトラウスをやったらこんな音になるんだというお手本のような、濃厚でそれでいて美しく、私にとっては大変満ち足りた時間を過ごさせていただいた、そんなシュトラウスを聴かせてくれたとお伝えしたと思うんですけど、シルマーのは、ティーレマンのよりも柔らかくて明るいシュトラウス。しかし舞台のコントロールもオケのコントロールも実にうまく、自家薬籠中とはこのことかといった感じですね。この人ほどコンサートよりもオペラが向いている人はいないんじゃないかな。

演出は例によって現代風の演出。だから舞踏会も何もありません。身分の高さというか金を持ってるんだということで、車の種類はわからないんだけど、マンドリカはロールスロイスのような車に乗って現れました。逆にアラベラやズデンカはV・ワーゲンのようなの5ドアの大衆車。その他求婚者たちもジャガー?のようなスポーツカータイプの車だったりということです。だからシュトラウスの甘い旋律にはちょっとなじまなくて僕は見るのに苦労しましたけれど、最後のアラベラとマンドリカのシーンは雪を降らせていたんだけど、これは今まで見た雪のシーンではぴか一に綺麗でしたね。延々何分だろう、10~15分くらいずっと雪が降っていて、そこであの2重唱はジ~ンときました。雪にも仕掛けがあって本当にきらきらゆっくり降ってくるんです。作品の性格上大成功にはなかなかならないけど、大変上質な上演だったと思います。(大成功しやすいのは、言うまでもなく「サロメ」「エレクトラ」「薔薇の騎士」あたりでしょうね。こんなこと書くとしかられてしまいますかね。)

       hakaru matsuoka

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2006年2月22日 (水)

コルンゴルト「死の都」ベルリン・ドイツオペラ

松岡究です。今日はドイチェオパーのコルンゴルト「死の都」に出かけました。日本では2度ほど井上道義さんが演奏会形式で手がけているようです。私はこの作曲家の作品自体を聴くのが恥ずかしながら初めてで、ですから何の先入観も持たずに聴きました。はっきり言って、すばらしい作品。聴きながらプッチーニとワーグナーを連想しながら聞きました。随所に洗われる美しい旋律、それを一緒に撫でるヴァイオリンやチェロ。これは全くプッチーニだし、オーケストラから聞こえてくる絢爛たる和声はワーグナーの影響?という具合にです。このオペラを書いたのは、若干22歳の時というから驚きます。もう作曲技法は熟しきっていて、プッチーニやワグナーのように、重くなくいやらしくもなく、しかし豊かで明るく、実にセンスのいい仕上がりの音楽でした。帰ってからちょっとインターネットで見てみたのですが、マーラーやR・シュトラウスにも「天才」と言わしめた人だったようですね。

指揮はフィリップ・アウガン、演出はフィリップ・アルラウド。コルンゴルトルネッサンスといっても、やはりまだマイナーな作曲家であることは、どうしようもなく客の入りは多く見て3分の1くらいでしょうか。ベルリンでもこの人気かと思うと少し残念でした。でもこんなすばらしいオペラを発見できたことは収穫でした。私もいつかやってみたい作品になりました。指揮のアウガン、この作品の良さを充分に引き出していて良かったです。

     hakaru matsuoka

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