2007年9月12日 (水)

ベルリン ムジークフェスト ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団

松岡究です。毎日寒い日が続きます。8月31日から始まったムジークフェストも終盤に差し掛かってきました。今度の日曜で終わるのですが、その日はラトル・ベルリンフィルが16時から、ドゥダメル・ベルリン国立歌劇場管が20時からとなっています。ダブルヘッダーを聴く人はいるのでしょうか?

曲目   ドビュッシー:カンマ

      ブゾーニ:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35a

      シベリウス:交響曲第4番イ短調作品63

  ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィメルマン

  指揮:マレク・ヤノフスキ

大変地味な曲が並んだ演奏会。日本ではこうは行かないでしょう。客の入りは7割ほど。しかし演奏会の質としては大変高いものだったと思います。それはまずヤノフスキの力によるところが大きいですね。指揮者としてこのような選曲は大変な自信と確信がなければ出来ないはずです。最初のドビュッシーの「カンマ」は20分ほどの得体の知れない曲ですが、ヤノフスキは全く聴く人を飽きさせず、静謐なうちに曲を終えました。次のブゾーニの協奏曲。先日聴いたラトル・ベルリンフィルのサラバンドとは全く趣を異にした明るい曲でした。ツィメルマンのヴァイオリンも気品があって素晴らしく、ヤノフスキもそれに応えるがごとく素晴らしい演奏。でも素晴らしかったのだけど、「この曲のどこが良いの?」という疑問は疑問のまま残りました。それよりもアンコールで演奏したバッハの無伴奏パルティータが素晴らしいできばえ。ツィメルマンの気品と歌心が見事に一致した名演。彼も素晴らしいヴァイオリニストに成長してきました。

休憩を挟んでシベリウスの4番の交響曲。やはりツィメルマン目当ての客は帰ってしまったようで、ちょっとお客さんが少なくなったかなあという感じ。しかしながら演奏は立派なもの。ヤノフスキはこの曲を暗譜で振り、オーケストラから燻し銀のようなサウンドを引き出していました。特に3楽章はオーケストラもヤノフスキも渾身の演奏。

でも一言!ヤノフスキの演奏はいつももう一つ心の奥に響いてこないんだなあ、どうしてだろう。本当に形は良く出来ていてある意味では非の打ち所がない演奏なのに。

   hakaru matsuoka

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2007年4月 1日 (日)

ベルリン放送交響楽団&モンテ・カルロフィルハーモニー合同演奏会

松岡究です。今日は指揮者のヤノフスキが主席指揮者を務めている2つのオーケストラの合同演奏会です。弦楽器だけでも80人(20型)、管・打で60人。ソリストが6人、合唱が男声が約120名、女声が約80名。そして指揮者。と言う馬鹿でかい編成。

曲目   シェーンベルク:グレの歌

   ソプラノ(トーヴェ):エヴァ・マリア・ヴェストブロック

   メゾソプラノ(ヴァルトタウベ):ぺトラ・ラング

   テナー(ヴァルデマール):ステファン・グールト

   テナー(クラウス・ナール):アーノルド・ベツイェン

   バス(バウアー):クワンチュル・ユン

   語り手:フランソア・ル・ルー

   合唱:ベルリン放送合唱団、MDRライプツィッヒ放送合唱団

   合唱指揮:ハワード・アーマン

  指揮:マレク・ヤノフスキ

正味2時間に及ぶ大曲。シェーンベルクの調性時代の集大成ともいえる金字塔。この後しばらくしてシェーンベルクは12音理論を発明しそちらの方面へ深く入っていくことになります。この曲を聴いていると、シェーンベルクはそんなに聴こえて来ないと言うか、ワグナーとR・シュトラウスを足してフランス風な味付けをしたように聴こえて来ました。この2時間の間、なぜシェーンベルクが12音に走ったかと言うことが、逆に強烈にわかっってしまうんですね。このような作品を書き得た彼は、これ以上どこに彼は自分の身を置いたらいいのかということに、物凄く悩んだことだろうと思うのです。やはりシェーンベルクの個性は12音を極めていた作品にこそその真価はあるのだろうと改めて思います(特に「オーケストラのための変奏曲」、「月に憑かれたピエロ」、オペラ「モーゼとアロン}は大傑作でしょう)。でも「浄夜」を初めいくつかの調性のある室内楽作品も私は大好きではあります。

ヤノフスキは2つのオケを見事に統率し、大編成からは考えられないくらいの精緻な音を引き出し、作品の真価を見事に描ききっていたと思います。彼は良い腕を持った素晴らしい指揮者です。合唱も素晴らしく、これぞプロファッショナル!24日に聴いたエルンスト・ゼンフ合唱団とは天と地ほどの差がありますね。

歌手もおおむね良く、特にステファン・グールトはよかったです。またラングは6人の中で一人暗譜で歌っていました。

   hakaru matsuoka

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2006年10月23日 (月)

ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団

松岡究です。今日も暖かい一日でした。全くコートは着る必要がなく昼間の気温も17・8度あったようです。

今日は昼の1時からこちらに留学しているトランペットの高見信行君が、今年の毎日コンクールで1位になったと言うことで、そのお祝いを兼ねて一緒に食事をしました。(日本で彼とは何度か仕事を一緒にしており、去年の4月ごろフィルハーモニーで偶然再会したんです。)凄いですね、1位なんて。でも彼の実力だったら当たり前だと思いますが。

そのあと4時からフィルハーモニーでベルリン放送響、7時からコーミッシェオパーで「コジ・ファン・トゥッテ」を聴くというハードスケジュール。

曲目   リゲティ:ヴァイオリン協奏曲

      ショスタコーヴィッチ:交響曲第13番「バビ・ヤール」

     ヴァイオリン:イザベレ・ファウスト

     バス:アルチュン・コチニアン

     合唱:ベルリン放送合唱団男声部

     指揮:マレク・ヤノフスキ

お祝いで昼間からビールを飲んだせいで、前半のリゲティの作品は5分ほど寝てしまいました。ですから論ずる資格はないのです。すみません!

後半はしっかり聴きました。オーケストラも50%はユニゾンで、合唱にいたっては99%はユニゾンで出来上がっているような不思議な作品。しかしその中にあるメッセージは強烈なものがあり、特に1・2楽章はオーケストラの絶叫する様は物凄い迫力。コチニアンは予定されていたアレクサーシュキンが急病で急遽代役。彼は美声ですが、代役と言うこともあり、やはり作品の内面を伝えるにはもう一息。合唱も線が細く綺麗に歌いすぎだと思いました。もっと土臭く、何かを抉り出すような迫力がほしかったですね。その反面オーケストラは良くヤノフスキに応えて迫真の演奏。そして最終楽章の消えるように終わっていく透明感のある祈りのような美しいメロディーは、ショスタコーヴィッチの当時の内面を如実に物語っているようで、1961年当時のあの冷酷なソ連に生きる作曲者を想像するには余りにも充分。

    hakaru matsuoka

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2006年9月 3日 (日)

ベルリンムジークフェスト ベルリン放送交響楽団演奏会

松岡究です。昨日の拍手のことは10秒以上静寂が続いたことをお知らせしましたが、そういえば私も一度経験がありました。2005年浜松交響楽団とマーラーの交響曲第9番をやったときに、浜松のお客様もその余韻を充分に味わっていたのを思い出しました。

曲目  エンリー・デュティーユ:メタボール

     メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調

     シューマン:交響曲第4番ニ短調

    ヴァイオリン:レオニダス・カヴァコス

    指揮:マレク・ヤノフスキ

ヤノフスキは意欲満々。まず協奏曲以外は暗譜。そしてデュティーユからシューマンに至るまでかなり音楽がエキサイティングでした。したがってテンポもかなり速いところが多く、かつかなり考えられた仕掛けが沢山してあって、今日来たお客さんはかなり楽しめたのではないかなと思います。

今までの印象は腕の良い職人という感が強かったのですが、今日は違う一面を見た気がしました。

カヴァコスは聞くのは2度目ですが、今回も堂々とした弾きっぷりで観客をひきつけて放しませんでした。ヤノフスキの方がどちらかというとエキセントリックで、時折カヴァコスがオーケストラを追っかける感無きにしも非ずで、こういった手垢のついた作品にはこのようなことも必要かもしれません。

面白かったのが、アンコールでカヴァコスはイザイの無伴奏ソナタを弾いたのですが、途中で弦が切れてしまい、コンサートマスターの楽器を借りてもう一度最初から弾きなおしたのです。何と音量は3分の2くらいになり、音色もひなびた感じになり、またカヴァコスの楽器では極限のピアニッシモがちゃんと弾けるのに借りた楽器では、フラジオ(音をわざと浮かせる奏法)のような音になってしまうことでした。やはり一流の奏者は一流の楽器を使っているのだなと改めて思い知らされました。いや~勉強になりました。

     hakaru matsuoka

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2006年6月22日 (木)

今日は難しい!ハンス・ウェルナー・ヘンツェ80歳記念演奏会

今日はコーミッシェオパーの「椿姫」にしようか、ベルリン放送交響楽団にしようか迷いましたが、椿姫はもう一回28日にあるので、ベルリン放送交響楽団の演奏会に行ってきました。実は内心千載一遇の機会だと思っていました。ただヘンツェということもあって、少々足取りは重かったのですが。前売りは30ユーロから15ユーロ。当日は30ユーロの席が10ユーロでした。その意味ではラッキー!!!

曲目:オール ハンス・ウェルナー・ヘンツェ作品

  インゲボルグ・バッハマンの詩によるソプラノと大オーケストラのための夜の小品とアリア

  ヴァイオリンとオーケストラのための協奏曲第3番  トーマス・マンの小説「ファウストゥス博士」に基づく3つのポートレート

  交響曲第8番

  ソプラノ:クラウディア・バラインスキー

  ヴァイオリン:ダニエル・ホープ

  指揮:マレク・ヤノフスキ

千載一遇のチャンスではあったんですが、はっきり言ってこのような演奏会には行きたくないです。

一曲目はソプラノのバラインスキーがとても節度のあるコントロールで歌っており、さすがはいろんな現代曲を初演してきた実力者だと思いました。音程は正確で発声も無理がなく透き通った声です。

2曲目はホープがこれまた素晴らしい。プロフィールに「ワイル、シュニトケ、武満、・・・の作品に関して彼に任せておけばなんら心配ない」ということが書いてありました。全くその通りで、ほぼ完璧にこの曲を弾ききったのではないでしょうか。

3曲目は小沢征爾さんがボストンで初演した作品。日本でも広告だけ見た覚えがありますが、確か差し替えになったんじゃなかったかな。30分弱の作品でした。

総じてヤノフスキは大変的確に高度な職人技でこの3作品を振ってのけました。ただ私の聴いた感じでは、もっと魂の叫びだとか痛みだとかそういった部分がすっと美しく通り過ぎてしまっているような気がして、とても整った演奏なんですが一種のつまらなさを感じたまま演奏会は終わってしまいました。

現代音楽の演奏会の常だと思いますが、こういった交響楽団での定期でこのようなプログラミングをすると、途中で席を立つ人や全く拍手をしない人がかなりいます。そして休憩後には2割以上の方が帰られた様で、かなり空席が目立ちました。

それにしてもこのようなドイツ魂の音楽を聴くと疲れます!シェーンベルクやベルクばかり聴いた後もこのような感じになることが多いですね。

現代音楽とは何でしょうか?私にはその答えはまだ出せません。

   hakaru matsuoka

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2006年5月22日 (月)

トーマス・ダウスガールト指揮ベルリン放送交響楽団演奏会 マーラー「復活」

松岡究です。昨日は本当はベルリン交響楽団の演奏会に行くつもりにしていたんですが、外が明るいので(日の入りは21時過ぎです)、なんか勘違いをしてしまって気が付いたらもう演奏会が始まっている20時でした。

そして今日はシュターツオパーでシェーファーが歌う「椿姫」を見ようと喜び勇んで出かけていったら、売り切れ!!え~~~!!!仕方がないのでそこから歩いて3分のところにあるコンチェルトハウスに行き、ベルリン放送交響楽団のチケットを入手。開演の1時間半前だったこともあって買えたんですが、後で聞くとこの演奏会も開演30分前には売り切れになったそうです。

曲目:マーラー 交響曲第2番ハ短調「復活」

アルト:モニカ・グロープ

ソプラノ:ルート・ツィーザク

合唱:ベルリン放送合唱団

指揮:トーマス・ダウスガールト

素晴らしい才能を持った指揮者です。速めのテンポでぐいぐいとオーケストラを引っ張っていく様は大変凛々しい感じ。かといって力づくではなく、ちゃんと見通しの良い読みがあるのがようくわかるんです。ですから弛緩した感じは全くなくて、演奏時間は80分を切っていました。ただテンポが速いせいか、マーラー独特の毒と言うか不安感・焦燥感あるいは安らぎ、素朴さと言った物が欠落ないし薄められた感じで、特に2・3楽章や4楽章の深遠さには手が届いていなかったですね。それは特にアルトのグロープにも多大の責任があるように思います。とても声量のあるいい声なんですが、歌が一本調子で、ここでアルトがどうしてこの歌を歌わなければならないのかわかってないですよ、きっと。

復活の合唱を担当した放送合唱団は圧巻!!こんな素晴らしい復活の合唱は生まれて初めて聴きました。(中学3年の時にサヴァリッシュ・N響で聴いたときの感動がよみがえりました。あの時は芸大の学生のコーラスだったんですが、終演後サヴァリッシュが楽屋に訪ねて見えて、「こんな素晴らしい合唱はヨーロッパでもなかなかない」と褒めてくれたと言うことを、当時芸大の学生だった山田茂先生から聞きました。)完全に溶け合ったハーモニー、そして遠近感のある表現。どこをとっても非の打ち所がない!うまいだけではなく感動を呼び起こす合唱でした。総勢70名ほどでしたがその壮大さ・豊かさは人数がいればでてくる物ではないんですよね。

思わぬ大収穫。シェーファーは今度にします。

    hakaru matsuoka

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2006年4月 1日 (土)

マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団定期

松岡究です。今日はヤノフスキ指揮のベルリン放送交響楽団の演奏会。曲目はモーツァルトの「セレナータ・ノットゥールナ」と2曲のソプラノのコンサートアリア、後半がシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」。最初のノットゥールナは大変品のいいそれでいて引き締まったいい演奏でした。昨今一般のオーケストラも古楽器の影響を受けその奏法を取り入れる傾向が強まっているように感じます。ベルリンでも然り。今日の放送オケ、そしてドイチェスシンフォニーは完全にその奏法を取り入れた演奏をします。それが言いか悪いかはまた別の問題ですが、私は大切なとこだと思います。楽員がその奏法を勉強することで演奏能力が一段と幅広くなると言う利点があるからです。私のいるコーミッシェオパーでもそういった奏法を積極的に取り入れようとしています。しかしここでも年代の格差、世代間格差があり古参の楽員は全くそれに付いていけず、其のためにオーケストラ響きの中に濁りが生じるんですね。

2曲目3曲目は今日予定されていたソプラノのマリン・ハルテリウスが3日前に病気で歌えなくなり、急遽アンネッテ・ダッシュという若手が呼ばれました。3日間で準備したとは思えないくらい彼女は立派に歌ってました。少々音程がぶら下がる時も散見されましたが、持ち前の気品がこの飛び込みの仕事を救っていたように思います。曲はKv272のah,lo previdiとKv505のch'io mi scordi di teの2曲でした。どちらも大曲で演奏時間は15分ほどかかります。特に2曲目はピアノコンチェルトにソプラノソロが付いたような異色の作品。

休憩を挟んで、大交響曲も実に引き締まったいい演奏でした。冒頭のホルンがプファッとやらかしてしまったのは甚だ残念でしたが、ヤノフスキのアプローチは成功していたと思います。この曲は歌ではなくまずリズムに着眼しないとドツボに嵌ってしまう恐ろしい曲ですが、さすがにヤノフスキはそのことは充分承知で、オーケストラから張りのある音楽を引き出していました。聴衆も大変に沸いて心地よい演奏会でした。N響に来たヤノフスキとは全く異なるエネルギッシュな指揮で、ちょっと見直しました。N響に来たときは腕の良い、でもあまり面白くない職人のような印象だったんですけどね。

          hakaru matsuoka

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