2009年5月14日 (木)

DVD ベルリンフィル 最高のハーモニーを求めて TRIP TO ASIA を見て

松岡究です。きょう「ベルリンフィル 最高のハーモニーを求めて」というDVDが届き、早速見ました。このDVDは以前に確か東急文化村で上映されていたものだと思います。

2005年のベルリンフィルのアジア演奏旅行に同行しながら、表には決して出ない楽員や指揮者ラトルの考えていること、感じていることを実に良く浮き彫りにした素晴らしい映像です。

私も指揮者ですが、オーボエのマイヤーをはじめ皆が少年・少女時代にコンプレックスを持ち、人に溶け込めず孤独であったことを述べていますが、私の若い頃にそっくりそのまま当てはまるので、みんなそうだったのかと何かほっとした気持ちになりました。

私は長崎生まれで、医者の子として育ちました。成績は良かったほうですが、小学4・5年の頃から吃音が始まり、国語の時間に何度も皆に笑われた経験や、なぜか皆に溶け込めず、孤立していました。ちょうどそんな時にドボルザークの「新世界」に心を奪われ、学校から帰るとまず新世界のレコードに針を下ろす少年になって行きました。そして音楽にこそ自分の居場所を見つけたというか、音楽こそが真の友達になっていきました。

中学になってもそれは変わらなかったのですが、県で一番の進学校(長崎大付属中)に進学したので、勉強の両立に悩みました。中2になる時父の仕事の都合で東京に出ることになったのは、その両立の悩みから開放してくれました。しかし長崎の田舎ものは東京でまた言葉のイントネーションからのコンプレックスで吃音がきつくなり、ずいぶん馬鹿にされました。

ベルリンフィルの素晴らしい方たちとは比べる術もありませんが、私も音楽に自分を見出す術をこういうときに見つけていたのかと今になって思います。そういうことを再認識させてくれた素晴らしいDVDでした。

    hakaru matsuoka

そんな少年時代のコンプレックス(今もコンプレックスはあります。何と昔よく言われたチビ・ハゲ・デブとは今の私のことです!)は皆も感じていたのだと思えると、

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2007年9月28日 (金)

ネーメ・ヤルヴィ指揮ベルリンフィル

松岡究です。今日は気温は全く上がらず、おまけに夕方6時くらいから冷たい雨になってしまいました。3日前までの暖かさはもう戻ってこないのかなあ。

今日のベルリンフィルのコンサートは、3年前にベルリンに来てちょうど50回目のコンサートでした。個人差はありますが、確実に2回生まれ変わった位の回数を聴いたと思います。ありがたいことです。

曲目   バルトーク:ピアノ協奏曲第3番

      ハンス・ロット:交響曲第1番ホ長調

  ピアノ:エレーヌ・グリモー

  指揮:ネーメ・ヤルヴィ

グリモーは今月2回目。以前にもベルリンで聴きましたから今日聴くのは3回目でしたが、今日の演奏が一番良かったと思います(1回目は確かシューマン、2回目がベートーヴェンの4番)。最初から最後まで、ピアノの音はくっきりと冴え渡り、特に第2楽章では、ヤルヴィのサポートもよく、実に美しい音楽を奏でていました。前2回はフォルテになると必ずオケに埋没してしまっていたのですが、今回は全くそういうことはありませんでした。これはヤルヴィの手腕にも大きく関わっていることだと思います。

後半のハンス・ロットの交響曲。こんなに純真無垢で、尚且つ素晴らしい音楽があったのかと驚きを禁じ得ません。今日の演奏そしてこの曲を聴いていると、自分の10代の頃が思い出されて、胸がきゅんとなりました(そういう音楽なのです)。第1楽章の冒頭、トランペットで柔らかに歌われる第1主題は、まさに青春といった言葉がぴったりです。そしてその主題を使って展開していくオーケストレーションも素晴らしいものでした。第3楽章などは思わず会場から「ブラーヴィ」の声が漏れ聞こえてきたほど、素晴らしい躍動感ある演奏でした。ヤルヴィはこの曲の真価を余すところなく伝え、55分にも及ぶこの交響曲のベルリンフィル初演を、高い品質の演奏で飾ったと思います。この曲は多分これから数多ある交響曲の中で、かなりの地位を獲得していくのではないかと思われます。

わずか26歳で夭逝したこの作曲家を惜しむとともに、また逆に、こんなに純真な魂の持ち主は、現世の荒波には耐えられなかったのではと、勝手に想像してしまいました。

   hakaru matsuoka

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2007年9月23日 (日)

ラトル指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団定期公演

松岡究です。昨日のラトル・ベルリンフィルの模様は、EMIミュージック・ジャパンのラトルのホームページの方に寄稿させていただきました。今確認しましたが、アップされておりますので、どうぞそちらをご覧下さい。宜しくお願いいたします。

http://www.toshiba-emi.co.jp/classic/rattle/review/

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2007年9月17日 (月)

ムジークフェスト ベルリン ラトル指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団演奏会

松岡究です。ムジークフェスト ベルリンも今日が最終日。16時からラトル・ベルリンフィルが、20時からドゥダメル指揮ベルリンシュターツカペレが演奏会をやり、この音楽祭は終わります。

ベルリンフィルの模様はEMIミュージック・ジャパンさんのほうに寄稿しております。今回はゲネプロ、1日目、そして3日目の模様を寄稿させていただきました。順次掲載される予定です。どうぞそちらをご覧下さい。

http://www.toshiba-emi.co.jp/classic/rattle/review/

ドゥダメル・ベルリンシュターツカペレは明日17日に場所を代えて、同じプログラムでコンチェルトハウスで,定期演奏会として行われます。そちらを聴きに行きますので、明日またブログに掲載いたします。

     hakaru matsuoka

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2007年9月 7日 (金)

ベルリンムジークフェスト ラトル・ベルリンフィル演奏会

松岡究です。毎日寒い日が続いています。日本はどうなのでしょうか?さて今回のラトル・ベルリンフィルについてはEMIミュージック・ジャパンのホームページの方に寄稿させていただいています。どうぞそちらをご覧下さい。

http://www.toshiba-emi.co.jp/classic/rattle/review/

hakaru matsuoka

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2007年6月 5日 (火)

ラトル指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 ピアノ ダニエル・バレンボイム

松岡究です。皆さんにお知らせがあります。4日付で本当はタイトルのブログをアップする予定でしたが、ラトル・ベルリンフィルの演奏会に限り、EMIミュージック・ジャパンの方に寄稿させていただく事になりました。

http://www.toshiba-emi.co.jp/classic/rattle/review/
今確認しましたが、私のレポートがアップされています。どうぞこちらを是非皆さんご覧下さい。

http://www.toshiba-emi.co.jp/classic/rattle/review/

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2007年5月25日 (金)

小澤征爾指揮ベルリンフィル演奏会

松岡究です。またまたこちらで風邪を引いてしまいました。結構しつこくて閉口しています。ベルリンは昨日は割りと過ごしやすい日でしたが、きょうはまた暑さが戻ってきました。湿度が気になりますね。ちょっとヨーロッパにしては変な気候です。

今日フィルハーモニーを入ったところで、関さんとばったりお会いしましたら、ただ券があるからということで、私の18ユーロの最低ランクの席は78ユーロの最高ランクの席で聴けるということになりました。関さん有難うございました。

曲目   プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番ト短調作品16

      チャイコフスキー:交響曲第1番ト短調「冬の日の幻想」

  ピアノ:ユンディ・リー

  指揮:小澤征爾

最初のプロコフィエフは、胸のすくような快演。こういったリズミカルな曲を振る小沢さんは天才的な指揮をします。持って生まれた敏捷性とリズム感のよさ切れ味のよさが思う存分発揮され、血沸き肉踊るような快感。リーのピアノも変な癖がなくのびのびとしており、大きく育っていく可能性を充分に感じさせるピアノでした。

そういえば私が学生の時に小沢さんが野島稔さんと確か田宮堅二さんとショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲第1番を指揮したときもそのリズム感の素晴らしさ、踊るような指揮の姿に打ちのめされたのを思い出しました。

後半のチャイコフスキー。多分練習が足りなかったのか、少し事故の多い演奏になってしまいました。小沢さんのベルリンフィルの演奏は3日間のうち3日目が必ずといっていいほど良くなると言うことを聞いたことがあります。1ヶ月前のブルックナーの第2番も3日目の演奏でしたが、これはもう大変な名演でした。今日は初日、明日明後日とどんどん良くなっていくのではないでしょうか。今回このチャイコフスキーはライブ録音されているそうです。

   hakaru matsuoka

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2007年5月19日 (土)

アッバード指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団演奏会

松岡究です。昨日は快晴で気温も19度から最低が8度と清清しい一日でした。

アッバードはベルリンフィルの監督を辞任してからもベルリンフィルとは良好な関係を保っているようで、毎年1回必ず客演しています。チケットの入手は大変困難で、必ず売り出しの日に3日間のコンサートは売切れてしまいます。

曲目  J・S・バッハ:ヴァイオリンと弦楽と通奏低音のための協奏曲ニ短調(チェンバロ協奏曲BWV1052の編曲による)

     クルト・ワイル:ヴァイオリンとブラスオーケストラのための協奏曲作品12

     ブラームス:交響曲第3番ヘ長調作品90

  ヴァイオリン:コーリャ・ブラッハー

  指揮:クラウディオ・アッバード

最初のバッハの作品は予告無しで取り上げられた作品。多分ワイルとブラームスでは演奏会が短いので、取り上げられのだろうと思います。しかし大変素晴らしい演奏。気品と陰影が同居して、またヴァイオリンが大活躍するように編曲されていて、大変楽しめました。バロックや古典の作品を演奏する時にはオーケストラはノンヴィブラートで演奏することはもう常識のような気がします。今回もそうでした。

ワイルの作品も輪郭がはっきりとしてとても美しく仕上げられた演奏でした。ただワイルの独特の「毒」とでも言うか、退廃的な雰囲気は後退してもうほとんど古典派の世界になっていたのは、少し残念でした。こういう作品は演奏にもう少しリアリティーがほしいですね。

休憩の時(午後9時ころ)、フィルハーモニーから眺める西の空は夕焼けでとても綺麗。そうなんです。午後9時でもまだ明るいんです。

メインのブラームス。ベルリンフィルのトップ奏者でも間違いはあるものですね。第1楽章の第2主題の途中で突然2小節間メロディーがなくなってしまいました。どうしてだろうとしばらく観察していました。アッバードは前半は大変素晴らしい集中力で振っていたのですが、このブラームスでは少し集中力を欠いていたように見受けられました。と言うのもその第1楽章での事故もさることながら、棒が1拍先に行っていることがしばしばで、ベルリンフィルもそれでは大変だったろうと思いました。ベルリンフィルとの関係があまりない指揮者だったら、もっと大変な事故が続出していただろうと思います。以前にこの3番をベルリンフィルでどなたかがやったときは、ほとんど空中分解していたと言うことをこちらに住んでいらっしゃる関さんから聞いたことがあります。今回のコンマスは安永さんでしたが、さぞ大変だったろうと思います。

音楽的な解釈でとても納得したことは、2・3・4楽章をアタッカ(休まず続けて演奏すること)で演奏したことです。本当なら全楽章そうしてもらいたかったのですが、アタッカで演奏することによって、この交響曲の大きな命題(真髄といってもいいかもしれません)が浮かび上がってきました。

敬愛されているアッバードはスタンディングオベイションの中、盛大な拍手を受けていました。

     hakaru matsuoka

 

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2007年4月23日 (月)

小澤征爾指揮ベルリンフィル演奏会

松岡究です。昨日は内田光子さん、。今日は小澤征爾さんの登場(といっても20日から本番をやってましたので、今日が最終日です)。日本人の活躍する週間です。

曲目   ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品19

      ブルックナー:交響曲第2番ハ短調(1877年、ノヴァーク版)

  ピアノ:ピエール・ロラン・エマール

  指揮:小澤征爾

今日も素晴らしいコンサート。最初の協奏曲はエマールの美しいピアノと小沢さんの精力的なきびきびした音楽がとても魅力的でした。昨日の内田さんのベートーヴェンとは正反対の(作品が若いと言うこともありますが)、瑞々しい音楽。

後半のブルックナーが本当に素晴らしかったです。まずベルリンフィルからあのようなしなやかな美しい音を引き出していた小沢さんの力量に改めて感心しました。普段はオケの中がコンチェルト状態なのですが、こんなにオケとして一つにまとまっていたのは久しぶりです。絶品だったのは2楽章。柔らかいしなやかな音はここで一番威力を発揮。ピアニッシシモ(ppp)に至るまで、ベルリンフィルの音はオケとしての合奏能力を遺憾なく発揮して、美しさの極み。そして4楽章がまた素晴らしい。この楽章に勿論ウェイトをかけているというのが良くわかりました。そして美しい音に加えて重厚な音と迫力あるサウンドを作り上げ、ブルックナーの中で一番地味で、とりとめのない交響曲を本当に聞かせてくれました。聴衆も沸いて、オケが去った後も小沢さん一人再度カーテンコール。来月の再度の登場が大変楽しみになりました。

   hakaru matsuoka

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2007年4月17日 (火)

ティーレマン指揮ベルリンフィル演奏会

松岡究です。毎日良く晴れて気持ちのいい日が続いています。

曲目   シューマン:「ゲノヴェーヴァ」序曲

            :チェロ協奏曲

      ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68

  チェロ:アルバン・ゲルハルト

  指揮:クリスティアン・ティーレマン

最初のゲノヴェーヴァからティーレマンの音楽が炸裂!この地味な作品をここまで練り上げて演奏会に出せるのはひょっとしたら今はティーレマンくらいしかいないかもしれません。それくらい良く歌って、陰影のついた演奏でした。

次のコンチェルトはどうも評価しづらいですね。チェロのゲルハルトはとてもいい音色の持ち主。アルテミス四重奏団でも活躍してる彼には期待していましたが、曲が地味なのも禍して、何が言いたいのか良くわかりませんでした。ティーレマンの伴奏の方がいかにもドイツ音楽と言う感じで面白かったです。

最後のブラームス。昨年6月にラトルが4番をやったときもこれ以上何があるのかというくらいに凄い演奏でしたが、今日の1番もそれに匹敵しうる凄い演奏でした。冒頭のフォルテ一つの意味を持たせた演奏は初めて聴きましたし、全体的に陰影が濃くアゴーギクも大胆で、大きくうねる部分とささやくような優しい部分の対比が見事でした。全体が1楽章の繰り返しが無いのに55分かかる長大な演奏。でもこれほどまでに面白く、忘れていた「ドイツ的」という言葉を思い起こさせてくれました。

ティーレマンは間違いなくラトルの後継者になるでしょう(初日はラトルが会場に聴きに来ていたそうで、ティーレマンが挨拶していたそうです)。そしてその音楽は私に言わせるならば、フルトヴェングラーの再来を思わせられました。

   hakaru matsuoka

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