パリ国立オペラ「トリスタンとイゾルデ」
松岡究です。昨日7月31日東京文化村オーチャードホールにおきまして、パリ国立オペラの最終公演を見ることが出来ました。家内の友人の小柳照久さんのご好意によるもので、大変感謝しております。
演目 ワグナー:トリスタンとイゾルデ
指揮:セミヨン・ビシュコフ
演出:ピーター・セラーズ
1幕が終わった段階では、スクリーンに映し出されるフィルムにかなり引き込まれ、とても興味深い演出だと思っていましたが、第2幕になるとどうもこの情報の多すぎるフィルムがかなり邪魔になって来ました。ご存知のように第2幕は、音楽的に最も劇的な、このオペラにとっては幹の部分。第1幕では面白く見れたフィルムも第2幕になるとかなり邪魔になり、音楽に集中できません。また歌手を黒衣のように扱っているため、歌手からほとばしる歌の情熱・情念・感情などがスクリーンに負けてしまって、こちらまで届かないのです。歌手たちは文句無く素晴らしい歌を歌っているのですが、どうもこちらまで来ない。第3幕でも同じで、この音楽的なじれったさは最後まで続くことになりました。
ビシュコフの棒は、ベルリンでケルン放送とのラフマニノフ2番、ベルリンフィルとのショスタコーヴィチ10番以来3度目でしたが、今までの中で一番流麗で、音楽の流れの美しい大変心地の良いワグナーでした。ベルリンフィルとの葛藤していたショスタコの10番もそれなりに良かったのですが、今日のビシュコフは彼自身も大変楽しそうな雰囲気で、彼の美感が良く出ていたのではないでしょうか。しかしビシュコフや歌手たちの健闘も空しく、巨大スクリーンの前に音楽が脇役になってしまいました。
hakaru matsuoka
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