2008年8月 1日 (金)

パリ国立オペラ「トリスタンとイゾルデ」

松岡究です。昨日7月31日東京文化村オーチャードホールにおきまして、パリ国立オペラの最終公演を見ることが出来ました。家内の友人の小柳照久さんのご好意によるもので、大変感謝しております。

演目 ワグナー:トリスタンとイゾルデ

指揮:セミヨン・ビシュコフ

演出:ピーター・セラーズ

1幕が終わった段階では、スクリーンに映し出されるフィルムにかなり引き込まれ、とても興味深い演出だと思っていましたが、第2幕になるとどうもこの情報の多すぎるフィルムがかなり邪魔になって来ました。ご存知のように第2幕は、音楽的に最も劇的な、このオペラにとっては幹の部分。第1幕では面白く見れたフィルムも第2幕になるとかなり邪魔になり、音楽に集中できません。また歌手を黒衣のように扱っているため、歌手からほとばしる歌の情熱・情念・感情などがスクリーンに負けてしまって、こちらまで届かないのです。歌手たちは文句無く素晴らしい歌を歌っているのですが、どうもこちらまで来ない。第3幕でも同じで、この音楽的なじれったさは最後まで続くことになりました。

ビシュコフの棒は、ベルリンでケルン放送とのラフマニノフ2番、ベルリンフィルとのショスタコーヴィチ10番以来3度目でしたが、今までの中で一番流麗で、音楽の流れの美しい大変心地の良いワグナーでした。ベルリンフィルとの葛藤していたショスタコの10番もそれなりに良かったのですが、今日のビシュコフは彼自身も大変楽しそうな雰囲気で、彼の美感が良く出ていたのではないでしょうか。しかしビシュコフや歌手たちの健闘も空しく、巨大スクリーンの前に音楽が脇役になってしまいました。

       hakaru matsuoka

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2007年9月24日 (月)

ベルリンコーミッシェオパー J・シュトラウス「こうもり」プレミエ

松岡究です。今日は一段と暑い日になって、ベルリンも夏が戻ってきたかのようでした。勿論早朝・夜は冷え込みますが、それもとても気持ちのいい感じです。

演目  J・シュトラウス「こうもり」プレミエ

  ロザリンデ:グン-ブリット・バルグミン

  アインシュタイン:クラウス・クトラー

  オルロフスキー:カロリーナ・グモシュ

  アルフレード:クリストフ・シュペート  他

指揮:マルクス・ポシュナー

演出:アンドレアス・ホモキ

コーミッシェ・オパーでは、クプファーの演出で、「こうもり」を先シーズンの7月まで上演していました。エレベーターのある大変有名な舞台で、ベルリン子は良くこの演出を知っています。7月までその名高い演出でやられていたところに、新シーズンの幕開けに新しい「こうもり」を持って来たのは、ホモキの強い意欲の表れだと思います。

今回のホモキの演出も、東京「フィガロ」、ベルリン「薔薇の騎士」の流れを強く感じさせました。舞台は急勾配の八百屋舞台。そして休憩を挟んだ2幕後半から、その舞台上では家具類が斜めになったり、ベッドがひっくり返ったりと、貴族社会の風刺・皮肉が大前提になっています。この歪な社会をまず皮肉ることこそホモキには必要で、それはヨーロッパの今尚根底に流れる貧富の差や、色んな格差を皮肉っているようです。登場人物の動かし方は、彼一流の天才的なものがあり、休憩後は幾分だらけたものの、大変楽しめる舞台でした。

ポシュナーは最初は力みすぎて、序曲は空回り。(1年前のムジークフェストでウェルザー・メストがクリーブランド管とやったこうもり序曲は最高でした。彼が小沢さんの後釜になるのはうなずける話です。)しかしそれ以後は極めて快調に飛ばしていました。

カーテンコールでは、ホモキに対してブラボーとブーイングの嵐の中、この舞台が練られて本当にいい舞台になることを願いました。

   hakaru matsuoka

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2007年7月19日 (木)

ベルリンコーミッシェオパー レハール「微笑みの国」

松岡究です。一昨日までの猛暑は影を潜め、やっとヨーロッパらしい夏になってきました。気温は30度に届かず、朝晩は20度くらい。これから週末にかけてはもう少し涼しくなるようです。

演目  レハール 「微笑みの国」

配役  リヒテンフェルス伯爵:ハンス・マルティン・ナウ

     リサ:タチアナ・ガズディク

     グスタフ伯爵:トム・エリック・リー

     スー・チョン王子:イェルグ・ブリュックナー   他

  演出:ペーター・コンヴィチュニー

  指揮:キリル・ペトレンコ

素晴らしい舞台と素晴らしい音楽。レハールがこんない充実した音楽を書いていたなんて恥ずかしながら今まで知りませんでした。まず何と言ってもペトレンコの奏でる音楽が素晴らしい。彼はウィーンフォルクスオパーのカペルマイスターを務めていたこともあり、この作品は既に手の内にあるこなれたものと見受けました。どこを取っても伸びやかな旋律とフレージング。そしてここぞと言う時のオケのドライブ。こんなに劇的なオペレッタだったんですね。勿論カーテンコールではペトレンコとオケに盛大な拍手とブラボーが。

歌手では声は少し非力ながら、王子役の代役を務めたブリュックナーがすばらしい。代役としては大成功。

コンヴィチュニーの演出は平たく言えば「反戦・反核。命の尊さ」にあったのではないかと思います。8人の国賓が出てくる所謂バレーの場面では、ナポレオン・ヒトラー・毛沢東・カストロ等の所謂独裁者を出し殺し合いをさせ、その場面の最後には核爆発の映像を流し、また2幕の女声合唱の場面では、戦争のむごさと虚無感を見事に演出していました。そして最後にはあっけなくミーの友人を中国人に殺害させ、中国での毛沢東の大量殺戮を暗に批判しているのではなかったかと思います。コンヴィチュニーが甘く切ない最後を悲劇として演出したことには度肝を抜かされました。まさに衝撃的舞台。そして素晴らしい舞台でした。

と言うことで、音楽監督のペトレンコは今日を最後にここを離れ、しばらくフリーで活躍するそうです。ペトレンコとコーミッシェオパーの蜜月時代は今日終わりました。素晴らしい時に私はここで勉強させていただき、心から感謝しています。

P.S.先日コワルスキーはコーミッシェオパーの専属をやめると書きましたが、引き続き専属を務めるようです。申し訳ありませんでした。 

   hakaru matsuoka

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2007年7月17日 (火)

ベルリンコーミッシェオパー R・シュトラウス「薔薇の騎士」

松岡究です。今日は暑かったです。38度会ったようで、外にでていると空気が体温より高いのが良くわかります。

久しぶりにトランペットの高見信行君と会って、昼はベトナム料理をご一緒しました。彼は去年の毎コン1位と言う優れものです。日本でも時々コンサートをやっているようです。音色は素晴らしいし、テクニックも抜群で、きっと日本を代表するトランペッターになるでしょう。楽しいひと時でした。

演目  R・シュトラウス「薔薇の騎士」

配役  公爵夫人:ゲラルディーネ・マックグレーヴィー

     オックス男爵:ヤンス・ラルセン

     オクタヴィアン:ステラ・ドゥフェクシス

     ゾフィー:ブリギッテ・ゲラー    他

  演出:アンドレアス・ホモキ

  指揮:キリル・ペトレンコ

この舞台は去年の4月のプレミエを出した舞台で、私はこのブログでベルリンで聴いたオペラの中のベスト5の一つということを書いたと思います。今日はそれを1枚も2枚も上回る素晴らしい舞台。プレミエのときのぎこちなさは全く無くなり、演技や動作が全て自然で、演出の意図が大変明確になっていました。歌手陣は上記の4人が圧倒的に素晴らしく、特に3重唱はうっとりするくらいに美しく、またラルセンの熱演は観客を惹きつけずにはいませんでした。そして何よりペトレンコとオケが素晴らしい音楽を奏で、4時間7分と言う時間の長さを全く感じさせない、引き締まりかつ雄大な音楽作りで大きな喝采を浴びていました。予告では4時間半と言う舞台だったのが、4時間7分と言う時間になったことからもどれだけスピーディーにそして引き締まった時間であったかがお分かりになると思います。言葉を変えて言うならば、それはペトレンコの音楽性そのもので、この若き巨匠の将来が本当に嘱望されます。

   hakaru matsuoka

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2007年7月16日 (月)

ベルリンコーミッシェオパー J・シュトラウス「こうもり」

松岡究です。ベルリンは予報どおり思いっきり夏になってしまいました。気温はそれまでの15・6度から倍の30度以上。今日などは35~8度の予報が出ています。大きな施設は冷房があるのですが、ほとんどそのようなものは無いのが一般的なので、例えば電車やバスなどはうだるような暑さです。多分車内は40度を優に超えていると思われます。大体が寒いところなので、バスや電車も大きな窓が開く設計ではありません。私のアパートは北向きなので、外とは全然違って長袖が必要です。一種の天然クーラーみたいなもんです(良かった!)。

演目   J・シュトラウス 「こうもり」

配役   アイゼンシュタイン伯爵:シュテファン・シュピーヴォク

      ロザリンデ:ジネアド・ムルヘルン

      オルロフスキー:ヨッヘン・コワルスキー    他

   演出:ハリー・クプファー

   指揮:キンボー・イシイ・エトー

クプファーの演出での最後の舞台。舞台にエレベーターを備え、舞台を回転させてスピーディーに物語を進行させるこの名舞台も最後の公演になりました。確か日本にもこの舞台は行っているはずです。今日で終わりとばかり、舞台では色々とアドリブがでてそれに聴衆が反応して大変活気ある舞台になっていました。またコワルスキーも今回でオパーの専属をやめるらしく (彼はここ数年この舞台にしか顔を出していません)、彼のファンがたくさん。見た感じはかなりお年を召したように見受けられましたが、歌い始めるとその声は健在!聴衆にも大うけで、カーテンコールでは花束が何本も投げ入れられる人気ぶり。やはり一世を風靡した人なんであります。

キンボーはこのオケから、ウィーン風の溌剌とした音楽を引き出していました。

来期はホモキの新演出で「こうもり」は続きます。早速9月23日にプレミエがあります。その様子はまたこのブログで報告したいと思っています。

    hakaru matsuoka

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2007年6月 6日 (水)

ベルリンドイツオペラ ツェムリンスキー「夢見るゲルゲ」

松岡究です。一日遅れの投稿です。昨日ドイツオペラでたいへん嬉しいことがありました。それは、私の大切な友人、神戸大教授の藤本一夫氏にばったり出くわしたことです。私がキャスト表を眺めていると「きゅーちゃん!」と日本語が。振り向くとフーニー(彼の愛称)が立っているではありませんか。男同士抱き合って再会を喜び、オペラ終演後はベルリンに留学している彼の愛弟子と3人でレストランへ。久しぶりの再会を喜び合いました。彼はドレスデンの郊外にあるゲルリッツの大学に3ヶ月客員教授として来ているそうで、8月まで滞在するそうです。またの再会を約束して夜中の12時過ぎに分かれました。

演目    ツェムリンスキー「夢見るゲルゲ」

配役    ゲルゲ:スティーブ・ダヴィスリム

       グレーテ:フィオンヌアラ・マッカーシー

       ミューラー:ティツィアーノ・ブラッチ

       ハンス:マルクス・ブリュック

       王女:マヌエラ・ウール  他

  指揮:ジャック・ラコンブ

  演出:ヨアヒム・シュレーマー

先週の5月27日にプレミエを出して、6月4日が3回目の公演。この作品は藤野氏(以下フーニー)によると、1907年にマーラーの指揮で初演されるはずだったのが、どういったわけか初演されずそのまま埋もれてしまったもので、1980年ニュルンベルク歌劇場で復活上演されたと言う曰くつきの作品だそうです。ツェムリンスキーには8本のオペラがあり一部を除いてほとんどがそういう運命にあった(オペラ以外の作品も)そうで、これからいろいろ復活上演・演奏が期待されるとのこと。

今日の上演は作品の上質な手応えは充分に有ったものの、上演としてはいささか低調な感がありました。その最大の原因は演出にあると思います。フーニーとも話しましたが、こういった一般に広く知られていない作品、ましてや埋もれていた作品の上演の場合、まず時代設定を台本どおりにやってほしかったと言うこと。それは作品の時代背景が見えるようでないと作品の意図するところがはっきりわからないのではないかと言うことです。今回の舞台には、まるでPotzdamer Platz駅のような空間にエスカレーターと階段を配置し、まさしく今のベルリンをそのまま持って来た何とも想像力の皆無な舞台装置。休憩後の2幕の初めにはスケボーをやる若者(実際にいるんです)を2・3分見せてから、音楽をスタートさせる。私に言わせると全くナンセンスの極み。

歌手ではゲルゲを歌ったダヴィスリムとグレーテのマッカーシーが良く健闘していました。しかしこの劇場の空間にはやや物足りない声。多分コーミッシェオパーや国立歌劇場なら全く問題はなかったでしょうが。ラコンブ指揮のオケもきれいに整った演奏。特に休憩後は乗ってきたのかずっと良くなりました。

音楽にはたいへん驚いたのですが、リヒャルト・シュトラウスの後期の作品に全くそっくりな響きやメロディーラインが数々見受けられました。そのシュトラウスがサロメを書いていた時代にもうこのような響きが実際に生まれており、初演されず眠っていた間にシュトラウスがああいった円熟の境地を迎えているんだということを考えながらこの上演を聴いていると、時代の求めている事と作品の時間差に何とも言えない面白さを感じます。

   hakaru matsuoka

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2007年5月31日 (木)

ベルリンコーミッシェオパー グルック「タウリスのイフィゲニー」

松岡究です。今日は一日肌寒い一日でした。皆コートを着たりジャケットを着たりしていました。勿論T-シャツの人もいますけど。夜の7時にオペラが始まって、終わったのが8時50分。劇場から出てくるとまだ明るいんです。妙に感激してしまいました。本当に一日が長くて、ヨーロッパの人たちにとってはたいへん貴重な夏なんだとあらためて思いました。

演目  グルック:「タウリスのイフィゲニー」

  配役  イフィゲニー:ゲラルディーネ・マックグレーヴィー

       オレスト:ケヴィン・グリーンロウ

       ピラーデス:ペーター・ロダール

       トアス:ロニー・ヨハンセン

       ディアナ:エリザベス・シュタルツィンガー

   指揮:ポール・グッドウィン

   演出:バリー・コスキー

休憩無しで上演された約1時間45分。舞台と音楽が緊密に結びついたたいへん素晴らしい上演でした。これほど緊迫感が最初から最後まで張り詰め、見ている人を飽きさせない上演も珍しいでしょう(4月22日プレミエ)。まず演出の力。昨日と同じコスキーの演出。舞台奥に光の当て方で変わる大きな抽象画を配し、それが場面の心理を的確に表していきます。それが時に涙したり、大きな慟哭を表していたりと素晴らしい発想。また歌手達も素晴らしい迫真の演技でその緊迫感を持続させます。音楽は指揮のグッドウィンの古楽器奏法を用いた緊迫感溢れる素晴らしい演奏と、歌手・合唱とも緊密な連絡を取った素晴らしいアンサンブル。ここまで息がぴたりとあって、空きのないオペラ上演も珍しいのではないでしょうか。また一つ素晴らしい舞台が出現しました。勿論今期も後3回上演され、来期も勿論コーミッシェオパーのレパートリーとして上演されます。

   hakaru matsuoka

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2007年5月30日 (水)

ベルリンコーミッシェオパー モーツァルト「フィガロの結婚」

松岡究です。このところ毎日夕立が降っています。今日も午後4時ころから1時間くらい夕立がありました。ベルリンの上空で暖かい空気と冷たい空気が交錯しているんでしょう。気温の較差が激しいです。

それから今日はオパーのオケのヴィオラ奏者の西山雄太君のご両親と劇場でばったりと再会し、観劇後雄太君とキンボーさんとご両親、日本からのお客様の浜野さんらと楽しい時間を過ごしました。

演目   モーツァルト:フィガロの結婚

配役

    伯爵:ギュンター・パーペンデル

    伯爵夫人:ベッティーナ・イェンセン

    フィガロ:ジェームス・クレスウェル

    スザンナ:ブリギッテ・ゲラー

    ケルビーノ:エリザベス・シュタルジンガー

    バジリオ:クリストフ・シュペート

    バルトロ:イェンス・ラルセン   他

  指揮 キンボー・イシイ=エトー

  演出バリー・コスキー

今日のフィガロはとてもいいテンポ感で、物語がどんどん進行して退屈せずたいへん楽しめる劇になっていました。それはとりもなおさずキンボーのテンポ設定の成功が第一で、3年前からこの演出でやってきた歌手陣のアンサンブルのよさにあります。

今日は今シーズン最後のフィガロの公演でしたが、たいへん充実した内容に満足。

   hakaru matsuoka

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2007年5月26日 (土)

ベルリンコーミッシェオパー ロッシーニ「セビリアの理髪師」

松岡究です。今日も熱い一日でしたが、オペラが終わって外に出ると通り雨があったらしく道がぬれていました。気温もぐっと下がって、半袖では寒いかな?というくらいに気温が急降下。「でも本当はこのくらいの気温がベルリンの今の時期の気温のはず」などと思いながら帰宅しました。

演目   ロッシーニ:セビリアの理髪師

配役  アルマヴィーヴァ伯爵:トーマス・ミハエル・アレン

     ロジーナ:カロリーナ・グモス

     バルトロ:マンフレッド・ザブロウスキ

     フィガロ:クラウス・クトラー

     バジリオ:ハンス・ペーター・シャイデッガー  他

   指揮:キンボー・イシイ=エトウ

   演出:ダニエル・スラター

大変楽しめた一夜。特にフィガロのクトラーがいいですね。いかにもイタリア的な明るい良く通る声と達者な演技で、今日の一押し。バルトロのザブロウスキも達者な演技で素晴らしい。バジリオのシャイデッガーは立派な声を持っていながら、それを生かしきれていないので、もう一つ演技にもそのキャラクターが生きてこなくて惜しいですね、声がいいだけに。ロジーナのグモスと伯爵のアレンは共にいいのですが、もう一つインパクトに欠けるのが惜しい。

指揮のキンボーも尻上がりに良くなって、とても良いテンポを作っていました。少しオケに傷はあったものの、全くの許容範囲。

それにしてもこのオペラをドイツ語でやるのには出演者皆がかなり意識してやらないと重く泥臭くなってしまうと思うんですが、それは杞憂に終わり、逆にドイツ語で大変軽快にやっていたところは素晴らしいとしか言いようがないです。

   hakaru matsuoka

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2007年5月20日 (日)

バレンボイム・ネトレプコ マスネ「マノン」

松岡究です。昨日は熱い一日でした。気温も24度くらいまで上がったそうで、部屋の中のほうが涼しいかったですね。

昨日はちょっと油断してて、オペラの公演に間に合うか合わないか位のぎりぎりの時間に行くと、国立歌劇場の横の広場には数千人の人だかりが。「こんな時に限って」と人を掻き分け掻き分け、7時ちょうどに2階の右サイドのほとんど舞台が見えない席に飛び込むと、舞台上に大きなスクリーンがあって、広場でやっているベルリン市長やBMWのお偉いさんの話を中継しているではありませんか。実は昨日は国立歌劇場が市民のために広場を開放してそこにも大きなスクリーンを配し、逆に歌劇場で行われるオペラを生中継すると言うお祭り。題して「全て人々のための国立歌劇場」

演目   マスネ「マノン」

配役    マノン・レスコー:アンナ・ネトレプコ

       騎士デ・グリュー:フェルナンド・ポルターリ(ローランド・ヴィラツォンの代役)

       レスコー(マノンの従兄):アルフレード・ダーツァ

       伯爵デ・グリュー:クリストフ・フィッシェサー

       ギヨー:レミー・コラッツァ  他

   指揮:ダニエル・バレンボイム

   演出:ヴィンセント・パターソン

まずマスネの音楽がこれほど魅力的で劇的なのには大変驚きました。それは勿論バレンボイムの表現が大変起伏に富み、雄弁且つ繊細だったからに他ならないのですが、マスネという作曲家をここまでやっちゃうなんて、彼の懐の深さに改めて脱帽しました。

この演目の一番の目玉はなんと言ってもネトレプコ!舞台に登場しただけで(2/3は舞台が見えない席でしたが)舞台が華やぐ稀なる才能の持ち主。そしてなんと言ってもそのチャーミングな歌声。上から下まで全く音色の変化が見られない完璧な発声とコントロールはいまや世界一の人気を裏付ける確たる証拠。

本当はもう一人目玉がいたのですが、昨日は病気で降板になりました。しかし代役のポルターリはヴィラツォンを補って余りある素晴らしい出来。ネトレプコに負けないくらいの歓声と拍手をもらっていました。彼の発声も無理なく、フォルテからピアニッシモまで完璧にコントロール出来る技術をちゃんと持っています。

パターソンの演出も大変美しい舞台を作っていました。ただスポットライト隊が出てくるのはちょっと閉口しましたが。つまり何の脈力があるのかそういう意味があるのかが全く不明です。

今年4月29日にプレミエを出して以来昨日が最後の「マノン」の公演でした。

   hakaru matsuoka

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