トン・コープマン指揮ベルリンドイツ交響楽団演奏会
松岡究です。昨日一昨日とベルリンは激しい雷雨と突風に見舞われました。特に昨日は夕方6時前から突然真っ暗になり、激しい雹が雨とともに降り、突風が吹き荒れました。もう凄まじいのなんの、ベートーヴェンの「田園」の4楽章もひょっとしたらこういった天気を描いているのでは、と思いました。
曲目 J・S・バッハ:管弦楽組曲第1番BWV1066
J・S・バッハ:カンタータ「満ち足りた安らぎ、望まれし喜びよ」BWV170
C・P・E・バッハ:オラトリオ「聖なるかな」Wq217
メンデルスゾーン:交響曲第2番変ロ長調「賛歌」Op52
アルト:ボグナ・バルトス
ソプラノ:リサ・ラルソン
テノール:ヴェルナー・ギューラ
合唱:RIAS室内合唱団
指揮:トン・コープマン
曲目を見てわかるように長いコンサートでした。しかし内容はとてもいいものだったと思います。DSO(ベルリンドイツ交響楽団)は基本的にやはりノンビブラート奏法。しかしところどころコープマンの指示でビブラートがつけられています。しかし紛れも無くバロックの典雅な音がオケから聞えてきました。
2曲目のカンタータは当初ソロをするはずだったカウンターテナーのアンドレアス・ショルのために設けられたもののようだった用ですが、その当人が病気で降板。変わってボグナ・バルトスが歌いました。正直な感想を言えば、ショルが下りたのなら、無理をしてやらなくても良かったのじゃないでしょうか。それよりもコープマンはメンデルスゾーンでショルを歌わせるつもりだったのでしょうか?そちらの方が気になりました。
3曲目のエマニュエル・バッハの短いオラトリオはたいへん小気味のいい、コープマンの持ち味である歯切れのよさと相俟って、たいへん充実した素晴らしい演奏でした。オケもコーラスも2群に分かれ、立体的なとても面白い曲でした。
今回のRIAS室内合唱団は女声19名、男声17名の計36名です。
後半のメンデルスゾーンの交響曲は約70分かかる大曲。全体は2部構成ですが、第1部のシンフォニアは通常の交響曲の1~3楽章と考えて差し支えありません。そして第2部の「賛歌」は合唱と3人のソリストを交えた壮大な素晴らしい曲です。昨年の1月に私も指揮したのですが、その時のことを今日は思い出しながら聴いていました。
オケを5・4・3・2・1.5とかなり絞り込んでやったのはどうだったでしょうか?ここまでなると室内オケのようになり、通常フル編成でやっているオーケストラはバランスが悪くなり(つまり金管が強くなったり)弦楽器が霞んでしまいます。今日も特に第1部の所謂第1楽章のところがかなりバランスが悪かったですね。通常に室内オケとして活動しているところの方が残念ですがうまく聞えます。しかし第2部になってから音楽は輝きを増し、演奏にも熱が入り感動的な終演でした。その立役者はやはりRIAS室内合唱団でしょう。36人の少人数ながら濁りのない、透明且つ力強い合唱はまず褒め称えられるべきです。あと独唱ではラルソンとギューラが素晴らしかったです。2人ともまさにオラトリオを歌う声で品格がありました。
コープマンは歯切れの良いシャープな音楽作りが身上だと思いますが、落ち着きと言うかしっとりした深いものが少々希薄で、特にメンデルスゾーンの第1部のような曲にはちょっと不向きなような気がしました。
hakaru matsuoka
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