ベルリンコーミッシェオパー モーツァルト「魔笛」
松岡究です。今日は大分暖かい一日でした。朝起きると昨日の雪は全部溶けていました。
今日のオペラは1月についで2度目になります。今回はドイツで経営コンサルティングでご活躍の松田龍太郎さん、通訳のヴォルフラム・ミッテルホイザーさんと3人での観劇でした。お二人が泊まっていらっしゃるホテルまで出向き、タクシーで劇場まで。軽くホワイエでお腹を満たした後観劇。休憩中やタクシーの中で色々お話できて、大変勉強になりました。ここにはなかなか書けませんが、やはり一線でバリバリに活躍なさっておられる方のマインドと行動力は普通の方とは一線を画すものです。ミッテルホイザーさんも大変流暢な日本語を操る方で、頂いたメールなどは日本人より完璧です。お二人に感謝!有難うございました。
さて2度目になる魔笛。一度目は面白いのとモーツァルトでこんなのあり!?との思いが交錯して、何ともいえない感じでしたが、今日やっといろんなことが見えてきました。
一言で言うと「大人の魔笛」なのです。
タミーノは大蛇に倒れるのではなく、マリリン・モンロー風の3人のダーメの毒にやられます。3人の童子は最初はひげを生やした老人に、2度目の登場ではインテリ風名探偵コナン、3度目は・・・しかしそれは全部操り人形なのです。夜の女王は1幕のアリアを歌っている最中に左手をもぎ取り、かつらを脱ぎ捨て、最後には倒れてしまいます。そして担架で運ばれる時に、左足がもげてしまいます。そうサイボーグ人間、それもポンコツの。「水」の試練、「火」の試練はそれぞれ海蛇に耐えられるか、鉄砲を向けられたことに耐えられるか。そしてもう一つ演出家が言いたかったことは「セックス」の試練。タミーノは普通であれば魔笛を吹くところが何度かありますが、それが笛ではなく男根を抱きしめながらそれに酔っているのです。パパゲーノも魔法の鈴を鳴らすと自分の物が疼いてしょうがないのです。それもこれも全部が3人の新しい登場人物(演出家が新しく書き下ろしたリブレットに沿って)の仕掛ける試練なわけですね。
最後には、勿論夜の女王もダーメもモノスタトスもいなくなってしまいますが、ザラストロも急性心不全で死んでしまいます。そして合唱はワインとパンを持って最後の合唱を歌います。つまりオシリスもイリスもそしてフリーメイソンも関係ない。我々は最終的にはキリストに帰依しているのだということなのでしょうか?
こういった新しい演出(リブレットの書き換え・追加)はこれからのオペラの生き残りの一つの方向かもしれません。確かに客は沸き、笑いは絶えず起こり観客は本当に楽しんでいるようでした。しかし、感動したとは言いにくい。こういった演出だと音楽がやはり後退してしまいます。歌い手は皆素晴らしいのですが、例えばパミーナのアリアが絶望のどん底で歌われるのが通常ですが、舞台がそういうシトゥエイションになってないので、この慟哭が聞えてこないのです。感動と楽しさが相容れないようなところにオペラの将来に一段と危惧を覚えるのは私だけでしょうか?
演出:ハンス・ノイエンフェルス
hakaru matsuoka
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