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2006年9月 9日 (土)

ベルリン ムジークフェスト クリーブランド管弦楽団演奏会

松岡究です。演奏会でたまに不幸な目に会うことがあります。それは第一には演奏がよくないときですが、それよりももっと深刻なことが時々起こります。今日はそうでした。

私の隣に中年のカップルが座ったのですが、男性のほうが物凄く酒臭いんです。1曲目が終わる頃には匂いで鼻が痛くなってきました。ベルリンでこういうことにあったのは初めてです。昔ブダペストに留学していた時はしょっちゅうでした。特に女性がこれでもかというくらい香水をつけて前の席にでも座られたらもう大変。音楽を聴くどころの騒ぎではなくなります。演奏は聴きたいけど、早く逃げ出して新鮮な空気が吸いたい。この葛藤の時間と化してしまいます。そして我慢していると本当に吐き気を催したりします。皆さんも気をつけてください。

今日は1曲目が終わった時点で逃げ出して2ランク上の席で聴いてきました。

曲目    モーツァルト:交響曲第38番ニ長調「プラハ」

       カイヤ・サーリアホ:オリオン

       ドビュッシー:交響詩「海」

  アンコール  J・シュトラウス:「こうもり」序曲

  指揮:フランツ・ウェルザー・メスト

とても素敵な演奏会でした。まずメストの指揮が颯爽として自然で奇を衒わず素晴らしい。それにクリーブランド管弦楽団が実に柔らかい品のある音を出していて、各奏者も音楽に無理のない気品のある音を持った腕利きばかり。

まずモーツァルトですが、柔らかく颯爽とした音楽が一貫して流れる中、例えば第2楽章の中間部ではメストはどんどんオーケストラをドライブして緊張感を高めていくんです。オペラ指揮者ならではの内在したドラマの描きっぷりに鳥肌が立ちました。こういった表現は普通のコンサート指揮者では決して聴きえない音楽つくりだと思います。

休憩を挟んで2曲目はフィンランドの女性作曲家サーリアホ(ドイツ人はザーリアホといっています)のオリオン。勿論あのオリオンを題材にその印象で音楽を綴ったもの。彼女は今欧米ではかなりの売れっ子で、意欲的な作品を次々と発表しているようです。ただ単に星の印象を綴っていくだけではなく、その神秘性は勿論のこと、ダイナミックな動き、ひょっとしたら衝突・爆発等のドラマまでを飽きさせることなく聴かせる力は相当な物だと思いました。

ドビュッシーは一般的なテンポよりもかなり速めのテンポ感で音楽を進めていくので、もっと歌ってほしい、もっと粘ってほしいというような気持ちが湧いてきます。どちらかというとあっさりした表現。しかし盛り上げるところは盛り上げ、コンサートを成功に導いていました。

アンコールに「こうもり」序曲、これが今日の白眉!オペラ指揮者の面目躍如。こんな胸の空くような序曲の演奏、クライバー以来聴いてないです。この演奏を聴きながらそのクライバーを重ね合わせて聴いていたのは僕だけでしょうか?それくらいツボに嵌った自由自在な表現は観客を興奮させるのに充分でした。儲けもん!!!

   hakaru matsuoka

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