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2006年7月 2日 (日)

ダニエル・バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場「カルメン」

松岡究です。ここ数日涼しい日が続いていましたが、今日からまた暑さが戻ってきたようです。今日のこのカルメンはドマシェンコは前回に引き続きですが、ホセにヴィラツォーンが出るということもあって随分前から売り切れ状態でした。私は6月に入って毎日キャンセルは出ないかとインターネットで検索していたら2枚だけキャンセルが出て、慌てて買いに行き何とか今日のカルメンを見ることが出来ました。

演目:ビゼー 「カルメン」

カルメン:マリーナ・ドマシェンコ

ホセ:ローランド・ヴィラツォーン

エスカミーリオ:アレクサンダー・ヴィノグラードフ

ミカエラ:ノラー・アムセッレム    

フラスキータ:ユーリア・レンペ

メルセデス:スザンネ・クロイシュ

ダンカイロ:ヤン・ツィンクラー

レメンダート:グスタフォ・ペーナ

モラレス:カイ・スティーファーマン

ズニガ:クリストフ・フィッシェサー

リッラス・パスティア:マルティン・フーク

指揮:ダニエル・バレンボイム

演出:マルティン・クシェーイ

この演出で、去年の11月に初めて見たときに、強烈な感激を受けたのを覚えています。今回は2階から見たので、かなりその様子がわかり改めて感激しました。

まず、前奏曲の後半、死のテーマが出てくるところはホセが銃殺されるところから始まります。そして4幕の最後でカルメンを刺し殺したシーンと、ホセとカルメンを争ったエスカミーリオが闘牛で絶命して運ばれるところのシーンが重なり、ホセは銃殺されて幕になるんです。つまりここで最初の銃殺のなぞが解けるんですね。観客は前回もそうでしたが、ここでいっせいに「オ~~」とため息をつきました。

一貫した「死」に対する、あるいは「死」をモチーフにした演出家のドラマの作り方が素晴らしく胸に迫ります。その証拠に子供の合唱は1幕ではピットの中で、4幕ではバンダで歌わせ、エスカミーリオが登場するところの例の追っかけの部分は子供のコーラスはカットされ、大人のコーラスだけで歌われます。つまり一度も舞台に顔を出さないんです。つまりどういうことかというと子供が出てくるとそのかわいらしさや生気に、ドラマがピンボケになることを完全に嫌がったに違いないと私は思います。

4幕でのコーラスは全員が白装束、顔も白く塗っています。つまりゾンビ集団があのコーラスを歌っているわけですね。ですから「殺し」のシーンの舞台裏のコーラスは舞台上で歌われ、ホセとカルメンを取り囲むようにして迫ってきます。「死」の世界に引きずり込もうとしているんでしょう。この演出は強烈です。

音楽面では、まずカルメンのドマシェンコとホセのヴィラツォンが二人とも素晴らしく圧巻。バレンボイムの鷹揚たるテンポにもものともせず、素晴らしい声と演技で聴衆を魅了しました。ミカエラのアムセッレムは線は細い物の、健気さをよく表現していましたし、エスカミーリオのヴィノグラードフも声が少々軽いのが気になりましたけど、かっこいいエスカミーリオを演じていました。それに端役ですが、ズニガのフィッシェサーが素晴らしい演技でした。

バレンボイムは悠揚たるテンポと緊張感のある音楽を作り上げ、私にしてみれば音楽の別の可能性を色々見せてくれて大変勉強になりました。6月28日と今日は私にとって大先生になりました。

終演後は会場はブラボーの嵐、そしてスタンディングオベイション。約15分間拍手は続きました。

     hakaru matsuoka

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