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2006年6月 5日 (月)

ベルリンコーミッシェオパー モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」

松岡究です。今日はコンヴィチュニーの演出で話題をさらったコーミッシェオパーの「コジ」です。

演目:モーツァルト:「コジ・ファン・トゥッテ」

   フィオルディリージ:マリア・ベングトゥソン

   ドラベラ:ステッラ・ドウフェクシス

   フェランド:ヨハンネス・フム

   グリエルモ:ミハエル・ナジ

   デスピーナ:ゲルトルード・オッテンタール

   ドン・アルフォンゾ:ディートリッヒ・ヘンシェル(病気のクリスティアン・チェレビューの代役)

   指揮:マルクス・ポシュナー

   演出:ペーター・コンヴィチュニー

全体としてよくまとまった素敵な公演でした。まずコンヴィチュニーの演出ですが、ここの出し物のもう一つ「ドン・ジョヴァンニ」よりもずっと楽しめて彼の考えていることが良くわかる良い演出だと思いました。「ドン・ジョヴァンニ」を見たときはもう二度と見たくないと思ったのですが。

1幕の最後の場面は勿論音楽で綴っていくんですが、フィガロやドン・ジョバンニのように大団円に向かっていく求心力はありません。そこをコンヴィチュニーは精神的な葛藤の場面としてわざと嵐の場面に設定して、この音楽が冗長になるのを防いでいたのはさすがだと思いました。そしてまた最後にやはりコンヴィチュニーは大どんでん返しをやってのけました。普通には4人はまた元の鞘に納まるのですが、彼の演出では、最後の最後で音楽を停め、「どうしてそんなことをやったのよ」「信じられない」と女性が言うと、皆アルフォンゾの仕業なんだと言い訳はするけど後の祭り。四人ともその場で別れて、男性二人が結婚してしまうんです。そして後ろにいた合唱に大段幕を持たせて、ここが光が反射してはっきり見えなかったんだけど「Sehen Sie ・・・・・Philosophie]と書いてあったんですね。ごめんなさい今度誰かに聞いときます。客はこれを見て大爆笑。大きなブラボーに包まれました。(多分「これがいまどきの哲学です」という意味の言葉が書かれていたんだろうと推測しますけど。)台本にないこと、話の変更をコンヴィチュニーはいろんな舞台でやっています。それが良いか悪いかはやはり見た人にゆだねられるんでしょう。だって今回は大いに納得する舞台でしたから。(ドン・ジョバンニは納得できませんでしたけど)こういう演出家による現代社会に即した読み分けはこれからのオペラを考える上で、救世主となるかもしてませんし逆にオペラを価値のないものにしてしまう危険もはらんでいるとは思います。

歌い手はどの人も遜色なく素晴らしい出来でした。指揮のポシュナーもオケからとても良い音とニュアンスを出していて、これからを期待させるに充分。音楽的には以前3回聴いたシュターツオパーを上回る出来だったと思います。

しかしながら、演出が圧倒的な力を持っていた舞台。こんな時は指揮者は本当に陰に隠れちゃいますね。でもわかる人はわかってますよ、ポシュナーさん。

        hakaru matsuoka

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