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2006年4月25日 (火)

拍手

松岡究です。先日ある方から「拍手」のことについてコメントがありました。その方には返事は差し上げたのですが、とても重要なことだと思ったので今日はそのことについて書かせていただきます

先日ベルリンフィルの演奏会でラトルが残念そうな表情を見せたと書きました。それは余りにも拍手のするタイミングが早すぎたんです。「ペレアスとメリザンド」は最後ピアニッシモで終わるのですが、ほとんどの聴衆はその余韻までラトルの動きにあわせて聴き入ろうとしていたわけです。そこに土足で踏み込まれたような感覚を覚えたのは私だけではなかったと思います。いやほとんどの聴衆がそう思いました。確信してそれは言えます。なぜか?私が今まで聴いてきたオペラやコンサートで一度もそういうことはなかった。そして私の周りの人たちが拍手が起こった途端にに「Oh!~」とため息をついて皆が残念がっていたということの2つではっきりそう言いきれるのです。隣の年配のご婦人と目が合った時、首を横に振られていました。

その拍手も一人だけだったら制することは出来たかもしれません。(現にコンサートで変な間に拍手をしようとする人がいると「シー!」と言う声が飛びます。)しかし一人が大きく手を叩き始めるとそれにつられて何人かが拍手をそれも大きくし始めたんです。もう後には戻れないと言うかしょうがないですね。まあ、これが日本人の聴衆がいっぱいいたからといってあれは日本人と決め付けたのはいささか短絡的ではありましたが。このコンサートでは、1幕で誰かわからなかったんですが、フラッシュをたく人もいたんです。それで異例ですがラトルがそれを大変紳士的に舞台から注意するという場面もあったんですね。しかし何度も痛い目にあっている私としては、是非ベルリンの聴衆のいいところを見習ってほしいと思います。勿論変なところもありますよ。演奏中いきなり鼻をチーンとかんだりするのはやめてほしいですけどね。

私の見解を述べさせていただきますと、拍手とは勿論とても大事でしたければ大いにする、したくなかったらしない。でもこの言い方は乱暴すぎるんです。これでは拍手のタイミングをどうとっていいかという疑問には答えていない。だからどうしても消極的になってしまいがちです。コンサートは聴くのが100%ではありません。見ることも大いに大事なことなんです。指揮者の動き、演奏者の体のゆれ、顔の表情等までもがコンサートの醍醐味です。ですから拍手をするタイミングは指揮者が腕を下ろしてから、あるいはヴァイオリニストだったら右手が下に下りてから、ピアニストだったら鍵盤から腕を下ろし顔を上げてから、が拍手するタイミングになるでしょう。曲がピアノやピアニッシモで終わる場合その余韻まで演奏者や指揮者と一緒になって聴こうとすると音楽が立体的あるいはどこか異次元の世界へ音が吸い込まれていくのが一緒に体験できる瞬間です。そして何かをそこに見つけたときピアニッシモで終わる意味がはっきりとわかり、深い感動を覚えることが出来るときなんです。演奏者は自分のイメージを音が消えても頭の中でしっかりと完結させてから素に戻ります。

ということはあのベルリンフィルでの拍手はラトルのイメージが完結する直前に始まったといってもいいでしょう。だから彼と気持ちを一つにして聴いていた大多数の聴衆は残念だったと思います。

     hakaru matsuoka

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コメント

松岡さん、ベルリンでご活躍中とのこと、羨ましいことです。
 ところで「拍手」のことですが、このことに限らず、最近は「ブラボー」と声を上げる様にもなりましたが、このタイミングにも気になることが多いですね。時には他と競う様に、最後の音が鳴り終わらないうちに、さながら「声を掛ければ良い」としか取れない様な輩(敢えてヤカラ」と言います)が、増えた様な気がします。
 日本では歌舞伎などで名演技に対して、大向こうから「XX屋!」と声が掛かりますが、これも壺を得てこそのワザでしょうね。
 先日のN響の定期演奏会でも同様のことがあり、後味が悪かったので、チョットコメントさせて頂きました。

投稿: wisteria | 2006年4月25日 (火) 18時58分

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