アルフレード・ブレンデル ピアノリサイタル イン ベルリン
松岡究です。今日はブレンデルのリサイタルでした。以前から大変楽しみにしていたコンサート。と言うのも1月にラトルとベルリンフィルでモーツァルトの27番のコンチェルトのチケットが取れなかったので、リサイタルは是非と思っていたんです。今日はその期待を裏切らないすばらしい演奏会でした。
曲目ハイドン:ピアノソナタニ長調HobXVI/42
シューベルト:ピアノソナタト長調D894
モーツァルト:幻想曲ハ短調KV475 ロンドイ短調KV511
ハイドン:ピアノソナタハ長調HobXVI/50
と言うラインアップ。
最初のハイドンからこのピアニストのすばらしいピアニズムは健在。音の粒立ちがすばらしく、完璧なバランス感覚でハイドンをおしゃれに弾きこなします。聴衆はまだ集中が足りず咳払いが良く聞こえたのが残念。次のシューベルト。私はシューベルトのソナタは長いので昔から閉口していたのですが、ブレンデルで聴くと45分があっという間の出来事でした。彼は気を衒うことなく淡々と弾き進めるのですが、どこにも自然な息遣いと歌にあふれ、またシューベルトの叙情性が気品高く歌われていくんです。彼の音は絶妙なピアニッシモにその真骨頂が表れていると思うんですが、それは気高く変な緊張感は全く無い完璧にコントロールされたそれもわざとらしさの無い自然なコントロール。まさに音とブレンデル自身が一体となっているんですね。
後半のモーツァルトはブレンデルのうなり声が聞こえてきました。でもその歌はやはり自然で型崩れすることなど一切無く、モーツァルトがこんなにも精神的に充実した音楽を書いたのかと言うことを改めて認識させてくれました。モーツァルトの短調の曲はどれも深い精神性が内蔵されているように思いますが、それを余すところ無く示してくれたのです。そのモーツァルトの後、この演奏会の最後に演奏されたのがまたまたハイドンのソナタ。モーツァルトの短調の曲を聴いた後でハイドンを聞くと、ハイドンがいかにモーツアルトよりも機知に富み、目をまん丸にして楽しんで音楽を書いている様子がありありとわかってきます。彼こそ天才で個性豊かな作曲家はいないと言うことが証明されたような感覚を受けました。
今年75歳になるブレンデルが敢えて今回のような曲目を選んでいると言うことは、精神的葛藤や作曲家との闘争と言うことから数段上の境地を獲得しているんではないかと思います。つまり曲目と四つに組んで相撲を取るような感じではなく、既に曲目と友達になっているとでも言うのかなあ、出てくる音は全て微笑んでいました。
hakaru matsuoka
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コメント
ブレンデル75歳!
ちょうど私より一回り年上だったのですね。
'60?年だったか、何と私が初めて生演奏を聴いたのが、彼の初来日、日比谷公会堂でした。ベートーヴェンのPf協は全て彼の廉価版のレコードで、当時、既にミミタコ状態でした。なので、わざわざ上京したのでした。でも、確か「ティアベッリの33の変奏曲」、、、曲が悪かったのか、彼も私も若かったからか、ピアニッシモで出目金が飛び出さんばかりに歯を食いしばり、、、
ついつい見とれてしまって、とても音楽を聴くという状況にありませんでした。
その次に聴いた彼のライブは、数年前、ラトル/ウィーンフィルとの来日公演で、ベートーヴェンのPf協4番でした。隔世の感!!
40数年ぶりに至福の時間を取り戻しました。
投稿: Momma | 2006年4月 6日 (木) 12時24分
ブレンデルのリサイタル! いいですねえ、羨ましい限りです。
学生時代、ブレンデルが弾くシューベルトの「最後の3つのソナタ」にすっかりはまってしまい、以来ブレンデルの大ファンになり、毎日のようにレコードを聴いていました。そう、本当に音が微笑んでいますよね。聴いていると、心が温かく満たされてきます。今でも、音に癒されたい時には、ブレンデルのCDによく手が伸びます。
75歳ですか。そんな年齢を感じさせないですね。いつかライブを聴きたいと思いつつ、いまだ叶わない夢です。Yにゃんこ
投稿: あだちにゃんこ J&Y | 2006年4月 7日 (金) 00時26分