ベルリンコーミッシェオパー「薔薇の騎士」プレミエ
松岡究です。ブラボー!!!私がベルリンに来て数ある公演を聴いた中で疑いなくベスト5に入る全てに満足した公演でした。そのベスト5とは、ティーレマンが指揮したR・シュトラウス「影のない女」「ダフネ」、シュターツオパーのロッシーニ「アルジェのイタリア女」、コーミッシェオパーのヘンデル「アルチーナ」そして今日のR・シュトラウス「薔薇の騎士」。番外としてコンサート形式ということでラトルの指揮したブリテン「ピーター・グライムズ」。
今日の指揮は勿論音楽監督のキリル・ぺトレンコ、演出は予定されていたリヒャルト・ジョーンズに代わって、インテンダントのアンドレアス・ホモキ。歌手は主なところは、伯爵夫人がゲラルディーネ・マックグレービー、男爵がイェンス・ラルセン、オクタービアンがステッラ・ドゥフェクシス、ゾフィーがブリギッテ・ゲラー。その他端役をコーミッシェオパーの専属が務めています。(マックグレービー以外は全部専属歌手です。)まずこの歌手たちは大変にアンサンブルがすばらしく声も同質で、最後の女性3人による3重唱などは今まで聴いた中でも飛びぬけてすばらしい出来でした。この重唱を聞きながら私の周りでは家内も含めて、何人もの人が涙をぬぐっていました。それほど美しかったんです。また私が以前2度指揮した「無口な女」ではモロズス卿という役柄が一番大変で、言葉の多さ、芝居の達者ぶりなど並みの歌手では勤まらないキャラクターですが、イェンス・ラルセンはモロズス卿と同じくらい大変な男爵役を本当に達者に見事にこなしていました。全てにおいて芝居から歌までそのアンサンブルのすばらしさ、歌の透明感など特筆すべきではないでしょうか。
ぺトレンコは最初こそ硬さが見られましたが、このオペラを室内楽的に捉え、大変透明感のある清潔かつメリハリの利いた音楽を聞かせてくれました。ご存知の通りワルツを多用しているこの曲は、指揮者とオーケストラのセンスがいっぺんに露呈してしまう危険性がありますが、そんな心配は全く無用でした。音楽の流れに身を任せて4時間半があっという間に過ぎ去っていきました。彼は本当にすばらしい指揮者に育ってきています。
ホモキの演出は、前回の「オネーギン」のように現代に読み替えていたらちょっと見たくないなあと思っていたのですが、それも無用の心配に終わりました。彼が東京で見せた「フィガロ」の空間をゆがめていく手法をここでも用いて、その貴族社会をある意味で風刺していきます。そして1幕から3幕まで空間をあえて狭めて見せることで人物の動きに集中度を高めさせて、演劇的な動きを凝縮して見せてくれました。
追伸:大野和士さんが、急遽ドイチェオパーにデヴューなさいました。演目は「タンホイザー」。私は全くこの情報を知らず、聴き逃してしまいました。
hakaru matsuoka
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